京大物理'05年前期[3]

次の文を読んで、  に適した式をそれぞれ記せ。文末の問1では指示された条件のグラフを、問2では{  }から正しいものを選んでその番号を、問3では適切な文章を、それぞれ記せ。
1のように、鉛直軸方向に滑らかに動く質量Mのピストン板と固定された底板からなるシリンダーの中に、誘電率がεの理想気体がnモル(mol)封入されている。両板はともに熱の伝導性がよいため、シリンダー内の気体は常に外気と同じ絶対温度Tに保たれるとする。また、両板はともに面積Aの円盤状の導体で、回路につないでスイッチSを閉じることにより、両板間に電圧Vをかけることができる。ただし、シリンダーの側面とハンドルは絶縁体でできているとする。ハンドルの質量とεの気体密度依存性は無視できるものとし、重力加速度をg,外気の圧力をP,気体定数をRとする。また、両極板間の距離をzとし、力や電界の向きに関しては、鉛直上向きを正の方向とする。
(1) まず、スイッチSが開いた状態で、ピストン板と底板はそれぞれQ ()の電荷を帯びているものとする。これらの電荷は両板の互いに向かい合っている面のみに、それぞれ一様な面密度で分布している。また両板の面積はともにじゅうぶんに大きいため、これらの電荷により両板間につくられる電界は、場所によらず一定の値 あ である。このときピストン板は、底板上の電荷がつくる電界が及ぼす引力を受ける。 あ が、ピストン板上の電荷がつくる電界と底板上の電荷がつくる電界との和であることを注意すると、ピストン板にはたらく静電気力が い であることがわかる。
(2) 次に、ピストン板を静止させたままスイッチSを閉じて、両極板間に一定の直流電圧Vをかけた。そして、ピストン板を手で支えながらゆっくり移動させ、両板間の体積がの位置で静止させたとする。時間が経過して電荷の移動がなくなった状態において、ピストン板を静止させておくのに必要な力をとする。このは、Vを用いて う と表される。 う の式から、Vがある閾値(しきいち) え より小さければ、 ()2か所でゼロになる。つまり、これらの2か所においては、支えていた手を離してもピストン板はその場に静止したままである。両板が全く帯電していないときにがゼロとなる位置を お とすると、を用いてそれぞれ か  き と表される。
1 の場合のの概形を描け。ただし、の位置、及びよりじゅうぶんに大きいzにおけるの漸近線を図中において明示せよ。
2 の場合に、,あるいはからずれたところでピストン板を支えていた手を離したとする。手を離した位置が(A) (B) (C) ,という3つの場合において、離した直後のピストン板のふるまいは{@ 鉛直下向きに移動する,A 静止したまま,B 鉛直上向きに移動する}のいずれであるのか、それぞれ該当する番号を選択して答えよ。
3 一方、の場合にはピストン板から手を離すと、ピストン板はどのようにふるまうか、簡潔に説明せよ。


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解答 2次方程式コンデンサーと気体の融合問題です。極板間電圧よりも大きくなるとクーロン力が支配的になり、よりも小さいと気体の圧力の影響が出てくる、という違いを意識しながら考えましょう。

(1)() 電界は両板間にのみ存在し、ピストン板の上側には電界は存在しません。ガウスの法則を適用するために、ピストン板をぴったり覆う閉曲面を考えると、ピストン板の上側からの寄与はなく、両板間の電界の大きさをEだとして、ガウスの法則より、

電界の向きは鉛直下向きで、両板間の電界は、 ......[]
注.ピストン板の電荷から上下方向に電気力線が延びると考えると、ピストン板の電荷が周囲に作る電界として、ピストン板をぴったり覆う閉曲面の面積は上下でなので、ガウスの法則は、となり、です。極板間には、底板の電荷Qもピストン板が作る電界と同じ向きに同じ大きさ電界を作るので、両電界を合わせて、大きさ電界ができることになります。ピストン板の上側では、ピストン板の電荷が作る電界と底板の電荷の作る電界が、等大逆向きとなるため、打ち消し合って、電界0になります。
() 底板の電荷がピストン位置に作る電界が、ピストン板の電荷Qに及ぼすを考えることにより、ピストン板に働く静電気力は、 ......[] (両板には異符号の電荷がいるので、この間に引力が働きます)

(2)() ピストン板と底板で形成されるコンデンサーの静電容量は、,両板に蓄えられる電荷は、です。ピストン板に働くは、手で支える電気力,鉛直下向きの外気による,ピストン板に働く重力,シリンダー内の気体が鉛直上向きに及ぼすです。
これらの力のつり合いより、
・・・@
シリンダー内の気体の状態方程式
を@に代入することにより、
......[] ・・・A
() のとき、となる位置が2カ所存在するために、に関する2次方程式と見て、この2次方程式が相異なる2実数解を持てばよいから、
判別式:


よって、求める閾値は、 ......[] ・・・B
() ,つまり、両板が帯電していないとき、Aより、
とすると、
......[]
()() で割り、をかけると、
・・・C
zの係数は、
・・・D
です。D÷Bとして、nRTを消去すると、

DとこれをCに代入すると、

より、
......[]

1 
などとして、などとしてを計算してみるとよいでしょう。グラフは右図のようになります。

2 (A) のとき、ピストンを支えるだから、手を離してこのがなくなれば鉛直下向きに移動します。よって@ ......[]
(B) のとき、だから、手を離せば鉛直上向きに移動します。よってB ......[]
(C) のとき、だから、手を離せば鉛直下向きに移動します。よって@ ......[]

3 の場合には、2次方程式:の判別式:となり、2次方程式が実数解を持たなくなります。
このときは、すべてのに対して、となり、どこで手を離しても鉛直下向きに移動します。


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