慶大理工数学'23[3]

何も入っていない2つの袋ABがある。いま、「硬貨を1枚投げて表が出たら袋A,裏が出たら袋Bを選び、以下のルールに従って選んだ袋の中に玉を入れる」という操作を繰り返す。

−−ルール−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

●選んだ袋の中に入っている玉の数がもう一方の袋の中に入っている玉の数より多いか、2つの袋の中に入っている玉の数が同じとき、選んだ袋の中に玉を1個入れる。
●選んだ袋の中に入っている玉の数がもう一方の袋の中に入っている玉の数より少ないとき、選んだ袋の中に入っている玉の数が、もう一方の袋の中に入っている玉の数と同じになるまで選んだ袋の中に玉を入れる。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

たとえば、上の操作を
3回行ったとき、硬貨が順に表、表、裏と出たとすると、AB2つの袋の中の玉の数は次のように変化する。


(1) 4回目の操作を終えたとき、袋Aの中に3個以上の玉が入っている確率はである。また、4回目の操作を終えた時点で袋Aの中に3個以上の玉が入っているという条件の下で、7回目の操作を終えたとき袋Bの中に入っている玉の数が3個以下である条件付確率はである。

(2) n回目の操作を終えたとき、袋Aの中に入っている玉の数のほうが、袋Bの中に入っている玉の数よりも多い確率をとする。を用いて表すと、となり、これよりnを用いて表すととなる。

(3) n回目()の操作を終えたとき、袋Aの中に個以上の玉が入っている確率はであり、個以上の玉が入っている確率はである。


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解答 難問です。特に(3)は、少ない袋を選んだときには多い方と同数にする、というルールの2つめが状況を非常に複雑にしていて、遷移図すら書きにくくさせています。さらに、では、袋A個以上になる場合の中に、袋B個の場合(Bの方が多い)が含まれることが状況をややこしくしています。試験会場でそんな精神的余裕を持てるか、ということはありますが、できれば、難解な(3)を捨ててでも、(1)で慎重に樹形図を書いて確実に得点したいところです。


(1) 右図樹形図(枠の色については、(3)で説明します)で、4回目操作後の青枠(1),赤枠(4),ピンク枠(2)の数を数えて、4回目の操作を終えたとき、袋Aの中に3個以上の玉が入っている確率は、 ......[]
4回目操作後、袋Aの中に3個以上の玉が入っていたとき、n回目操作後の袋B内の玉の個数をとします。
このとき、
4回目以降()、袋B内の玉の個数が4以上()になるとになることはありません。
となる確率は右図樹形図より,このときとなることはなく、となるのは、5回目、6回目、7回目、いずれも表が出た場合で、この確率です。
となる確率は右図樹形図より,このときとなることはなく、となるのは、5回目、6回目、7回目、いずれも表が出た場合で、この確率です。
5回目に裏が出ると、になります。このとき、となることはなく、になるのは、6回目、7回目に表が出た場合で、その確率 ・・・@
注.
5回目表のときは、A4個以上になってしまうので、6回目、7回目に裏が出ても、にならない。
となる確率は右図樹形図より,このとき、となるのは、5回目、6回目、7回目、いずれも表が出た場合で、その確率は
5回目に裏が出ると、になります。以後は@と同じで、となる確率
注.これも、と同様、
5回目に表が出るとA4個以上になり、6回目、7回目に裏が出ても、にならない。
となる確率は右図樹形図より5回目に裏が出るとになるので、になるのは、5回目、6回目、7回目、いずれも表が出た場合で、この確率です。
求める条件付確率は、
......[]
別解.上記のようなことになるなら、論理的に進めるよりも、右下図樹形図を書いて数える方がラクです。

(2) n回目の操作後、袋A内の玉の数が袋B内の玉の数よりも多い確率をとすると、袋B内の玉の数が袋A内の玉の数よりも多い確率もとなります。また、袋A内の玉の数が袋B内の玉の数と等しくなる確率は、です。
回目の操作後、袋A内の玉の数が袋B内の玉の数よりも多くなるのは、
n回目の操作後、袋A内の玉の数が袋B内の玉の数よりも多いか、等しい場合に、回目で表が出るときです。その確率は(2項間漸化式を参照)
......[] ・・・A
 ・・・B とすると、
A−Bより、
これより、は、公比:,初項:
等比数列です。よって、
 ∴ ......[]

(3) 遷移図を書いて漸化式を作りたいところですが、状況をどのように分けて考えるか悩みます。ここでは、上側の樹形図の4回目操作後から5回目操作後への遷移について考えることにします。まず、n回操作後、表が出続けた場合(青枠)を分けて考えるべきでしょう。また、n回目操作後に、袋Aと袋Bがともに個以下になってしまうと、回目に表が出ても裏が出ても、回目操作後に袋Aも袋Bもともに個以下になり、袋Aも袋B個にならないことに注意します。
回目操作後に個以上になるとき、n回目操作後にどういう状況になっているかを考えます。まず、袋A個で袋B個以下となる場合(赤枠)と、袋Aと袋Bがともに個の場合(ピンクの枠)があります。
また、袋
A個で袋B個以下となる場合(緑枠、4回目操作後には出てきませんが)と袋Aと袋Bがともに個の場合(オレンジ色の枠)があります。
また、袋
Aの玉の数と、袋Bの玉の数が対称性を有することに注意します。
Aより袋Bの方が多い黄緑色の枠からオレンジ色の枠に遷移する場合もあります。

n回目操作後に、
・袋Aの玉の数がn個になるのは、n回全て表が出る場合で、この確率は,同様に、袋Bの玉の数がn個になる確率もです。 ・・・C
・袋Aの玉の数が個、袋Bの玉の数が1個以上個以下になる場合を(),その確率をとします。袋Bの玉の数が個、袋Aの玉の数が1個以上個以下になる確率もです。
・袋Aの玉の数と袋Bの玉の数が等しく個になる場合を(),その確率をとします((1)とは異なります)
・袋Aの玉の数が個、袋Bの玉の数が1個以上個以下になる場合を(),その確率をとします。袋Bの玉の数が個、袋Aの玉の数が1個以上個以下になる確率もです。
・袋Aの玉の数と袋Bの玉の数が等しく個になる場合を(),その確率をとします。
n回全て表または裏となる場合と()()()()は排反です。
回目操作後、
・状況()になるのは、状況()あるいは状況()において、表が出る場合です(上の樹形図で、5回目の赤枠を見てください)。その確率は、
 ・・・D
・状況()になるのは、n回目まで表が出て、回目に裏が出る場合、あるいは、n回目まで裏が出て、回目に表が出る場合です(上の樹形図で、5回目のピンクの枠を見てください)。その確率は、
 ・・・E
・状況()になるのは、状況()あるいは状況()において、表が出る場合です(上の樹形図で、5回目の緑枠を見てください。但し、4回目には緑枠はありません)。その確率は、
 ・・・F
・状況()になるのは、状況()において裏が出て袋Aと袋Bが同数になるか、状況()で袋Aと袋Bが入れ替わった場合において表が出て袋Aと袋Bが同数になる場合です(上の樹形図で、5回目のオレンジ色の枠を見てください)。その確率は、
 ・・・G
なお、上の樹形図の4回目、5回目操作後で、黄緑色の枠は状況()の袋Aと袋Bを入れ替えた状況、うすい黄緑色の枠は状況()の袋Aと袋Bを入れ替えた状況を表しています。
4回目操作後の樹形図より、
Eより、 ・・・H
これはを満たしています。
これをDに代入して、
両辺にをかけて
(漸化式の技巧を参照)
よって、は、公差:
2,初項:等差数列です。
 ∴  ・・・I
これは、を満たしています。また、Gより、
 ・・・J
これは、を満たしています。JをFに代入して、
両辺にをかけて、
階差数列の公式より、
 ()
 ( 等差数列の公式を使用)
 ・・・K
より、のときもこれでOKです。
以上より、
n回操作後に、袋A個以上の玉が入っている確率は、C,H,Iより、
......[] ・・・L

A個以上の玉が入っている確率の方は注意が必要です。
のとき、袋
A2個以上の玉が入るのは、[]の解答でとしたに、()()の場合の、を加えたではありません。上の樹形図を見ると、袋A2個、袋B3個入っている場合(Bの方が多い)の確率が抜けています。
のときにも、袋
A個、袋B4個の玉が入っている場合(Bの方が多い)があります。
つまり、
n回操作後、袋A個の玉が入っている場合は、()()に加えて、袋A個、袋B個入る場合を加える必要があります。これ以外に、袋A個入ることはありません。
A個、袋B個入るのは、回操作後に、袋ABともに個玉が入っていて(状況)、裏が出た場合だけです。その確率は、
 ・・・M
よって、n回操作後に袋A個以上玉が入っている確率は、J,K,L,Mより、
......[]
のときのときとなりますが、上側の遷移図で数えて求められる確率に一致します。



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