慶應大学理工学部2009年数学入試問題


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[A1](1) 平面上において点Oを中心とする半径rの円を考える。この円の外部にある点Aからこの円に引いた2本の接線のなす角度がであるとき、の値は ア である。
(2) xy平面上で放物線Cと直線lが囲む図形の面積は イ である。放物線Cと直線lとの2つの交点をABとする。点Pが放物線上をAからBまで動くとき、三角形APBの面積が最大となるのは点P( ウ  エ )のときである。点から直線lにおろした垂線をとすると、Hの座標は( オ  カ )である。
(3) xy平面上において曲線および2つの直線により囲まれる図形をKとする。図形Kx軸のまわりに回転してできる立体の体積は キ であり、図形Ky軸のまわりに回転してできる立体の体積は ク である。
[解答へ]



[A2] さいころを投げるという試行を繰り返し行う。ただし、2回連続して5以上の目が出た場合は、それ以降の試行は行わないものとする。
n回目の試行が行われ、かつn回目に出た目が4以下になる確率をとする。このとき、 ケ  コ である。またとおく。に対して、の間に成立する関係式を求め、それを ()の形に書くと サ である。よって、( シ )となる。
また、
n回目の試行が行われ、かつn回目に出た目が5以上になる確率をとする。このときである。とするとき、の間には ス なる関係式が成り立つ。したがって、5以上の目が出る回数の期待値は セ である。
[解答へ]



[A3] とする。xy平面上において点を中心とする半径rの円を考える。この円が曲線C ()に接するのは、半径rがどのような値のときであるかを調べてみよう。この半径rの円が曲線Cと接するとき、その接点のx座標は、曲線
と直線が接する場合の接点のx座標と一致する。
 ソ のとき、において タ でのみ極小となる。よって、x座標がなる点において半径 チ の円だけが曲線Cに接する。
 ソ のとき、においてで極大となり、 ツ  テ  ()において極小となる。したがって、x座標がなる点で曲線Cに接する円のほかに、半径 ト の円がx座標がなる2点において曲線Cに接する。
[解答へ]



[A4] とする。このとき、3次方程式
はただ一つの実数解をもつ。正の数Rに対し、の範囲でaを動かすとき、対応する実数解が整数となるようなaの個数をとする。
となるような
Rの範囲は ナ  ニ である。
とおき、
uで表すと ヌ となる。したがって、aを使って表せば
 ()
となる。
が有限な正の値となるのは
 ノ のときであり、そのとき ハ である。
[解答へ]



[B1] xy平面上において円Cと直線lを考える。
(1) 行列で表される1次変換によって、円Cはどのような図形に移るか。理由をつけて答えなさい。
(2) Cと直線lとの交点の座標は( ヒ  フ )( ヘ  ホ )である。
(3) Cを円Cに移し、直線lを直線lに移す1次変換を表す行列をすべて求めなさい。求める過程も示すこと。
[解答へ]




各問検討

[A1](解答はこちら) ことしの慶大理工の[A1]は特に検討するほどのこともない易問です。各学校の授業をよく聞いていれば、どんな受験生でも解答できるはずの問題です。
大学入試に深い思考力を要求するような問題が出題されると、難問奇問を出す大学入試が教育を歪めている、と、よく言われます。確かに、
東大理系09年前期[6]のような問題は困りますが、かと言って、本問レベルまで下げてしまうのはどうか、と、私は思います。
教科書レベルの基本問題もできない人間が、高難度の問題に挑戦できるのか、というようなことを言う先生が多いのですが、東大理系
09年前期[6]でそこそこの答案を書くのに、本問のような基本問題になるとやたらとミスを連発する、という受験生を、私は何人も見てきました。難問に積極的に挑戦するのだけれども、簡単な問題ではミスだらけになる、という人は実際にはかなり多いのです。易問でミスをしない人間を合格させてしまえば、難問に挑戦する人がいなくなってしまう、と、私は思います。
さりとて、数学のセンター試験のような試験も課されているので、受験生は、易問でミスをしない対策も充分に考えておかなくてはいけません。
本問では、ミスをこわがって、ていねいに見直しながらやっていくと、
[2][5]に取り組む時間が足りなくなります。しかも、ミスの多い人に限って、見直しをしたときにミスをやらかすのです。また、試験会場で、と因数分解してしまう人は、時間をかけて何度見直しても、に見えてしまうのです。多分、脳の血液の温度が上がりすぎて、脳内で視神経の回路と積の計算をする回路が切れてしまうのだろうと思いますが、熱くなっているときに、検算をしても無意味だということです。
かく言う私もミスが多いのですが、以前、雑誌「大学への数学」の東京出版の方に、一度、全く別のことをやって完全に忘れてから見直す、というチェックの手法を教えて頂きました。本問で言うのなら、見直しなしで、さっと、
5分程度で(1)(2)(3)の答案を書いてしまい、即、[2][5]に飛んでしまうのです。見直しをしっかりやってしまうと、視神経回路と積の計算回路の切れた状態が定着してしまい、[2][5]を解いて戻ってきても、切れた状態が維持されたままになるかも知れません。切れた状態が、[2][5]を解いている間に、復旧している必要があるので、最初は、どんどん答案を書いてしまって、戻ってきたときに、初見の感覚で見直すようにします。自分のミスには気づかないくせに、他人のミスにはやたらと気づく、というのは、新鮮な目で客観的に眺めるとミスに気づきやすい、ということなのです。



[A2](解答はこちら) 確率の問題ですが、主要部分は3項間漸化式を立てて一般項を求める、という平凡な問題です。3項間漸化式を立てるところは、少し熟考する必要がありますが、()()の具合から推測できるように配慮されているので、何とかなるでしょう。漸化式は、解ける、というだけでなく、自力で立式できるようにしておかなくてはいけない、ということです。
最後の期待値は、ノー・ヒントだと難しいですが、として計算するように指定されているので、単なる計算問題です。解答では、を代入して、を別々に計算していますが、

と書いてみると、なので、
とすれば、もっと要領よく計算できます。
なぜ、
5以上の目が出る確率がで求められるのか、と、言うと、「n回目の試行が行われ、かつn回目に出た目が5以上になる」というのは、5以上の目がn回出る場合だけでなく、回出る場合、回出る場合、・・・,を全て含んでいるので、ちょうどn回だけ5以上の目が出る確率をとすると、
,・・・
となっていて、
が、(回数)×(ちょうどその回数になる確率)の和になっているからです。2009年時点で、将来、学習指導要領が改訂され、高校数学で、統計や条件付き確率が必修になってくるようですが、そうなると、本問()はノー・ヒントで出題されるようになり、上記は重要な受験技巧の1つになるかも知れません。



[A3](解答はこちら) 一見して複雑そうですが、やってみると、問題文中の関数を微分して増減を調べ極値を求めるだけの問題です。円と双曲線の位置関係をつかんで解答できるに越したことはありませんが、必要以上に惑わされないようにしましょう。場合分けの端点の値を聞いてきていますが、の中に出てくるが定符号か、正負いずれの値もとり得るのか、結局、2次方程式が相異なる2実数解をもつかどうか、で、場合分けすればよい、と、気づけば大したことはないでしょう。



[A4](解答はこちら) 問題文、解答を読んでいかがでしょうか。何を言っているのかわからない問題文、何を言っているのかわからない解答、と、思う方と、簡単なことをバカ丁寧に書いている、と、思う方に分かれるのではないか、と、思います。
冷たく言うと、慶大理工に合格できるのは、後者の皆さんです。
慶大理工を目指す諸氏は、のグラフを頭に思い描きながら、問題文が何を言っているのか、は結局何なのか、何をすれば解答できるのか、ということを考えられるようにしてください。将来、研究者、技術者として社会の第一線に立つためには、自分が設計開発しているものが実際に形になったときに、どういう風に機能してどんな問題点が生じるのかを設計段階でイメージできることが最低限の条件です。これができないと、命令された通りに図面を描き、仕様書通りにコーディング・テストを行うだけの熟練技能者として扱われてしまいます。技術者として勝ち組になれるか負け組になってしまうかがここで分かれてしまうのです。
火を噴くテレビ、ガス漏れするストーブ、タイヤが外れてしまうトラック、銀行
ATMが止まってしまうオンライン・システムを技術者に開発されたのでは企業はやっていけないので、一般社会では厳しい目で技術者の選別が行われてしまう、というのが現実なのです。その第一歩がこの問題に現れている、ということが言えると思います。その分かれ目は、知識とか能力とか勉強量、というものではありません。意欲とかチャレンジ精神とか野心と言えるようなものです。教育評論家が言う教育的配慮のようなものは、激しい競争にさらされている技術の第一線では通用しないのです。
こちらをご覧の皆さんには、不親切そうに見えるわかりにくい問題文を前にして、甘いいたわりの言葉をかけてくれる人に寄りかかることなく、自分自身を厳しく見つめるようにお願いしたいと思います。




[B1](解答はこちら) 直交変換をネタにした、京大理系'09年乙[4]とほぼ同一内容の問題です。もちろん、直交変換そのものは高校の範囲外ですが、高校の内容に通ずる関連事項も多いので、入試でも採り上げられます。「直交変換」という名前を覚えても得るものはありません。円を円自身に移す変換は、回転と対称移動になる、ということを理解しておけば充分です。よくよく考えれば、当然のことと納得がいくでしょう。
自分のやるものはこれだけ、と、決めてしまって、周囲のアドバイスも全く受け入れずに、ひたすら自分の可能性を狭めてしまう受験生を時々見かけるのですが、こういう問題が入試に出てくる、ということは、視野を、高校数学の外に広く向けておく必要がある、ということです。そもそも、何のために受験勉強するのか、と問われたときに、大学に行きたいから、ということでは困ります。より高度な専門的な勉強をしたいから、ということでなければ、受験勉強にも身が入らないでしょう。であれば、時々は、大学でどんなことをやるのだろう、と、興味を持っておくことも大切です。そうしたことで、こうした問題にも取り組めるようになるのです。
ただ、この問題は、具体的に円と直線の交点の座標を求めるようになっているので、解答の注.に書いておいたような方法で、幾つか点をとって行列を求めることができた受験生が多かったようです。ということは、抽象的に見える問題では、具体的に事例を挙げながら考えて行くと、問題が解ける、ということです。




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