早大理工物理'10[3]

図のように、水平面上に2本の導体レールを、間隔で平行に置く。そしてレールの左端に、抵抗値Rの抵抗、起電力Eの電池、スイッチを、導線に直列につなぐ。また、それらと並列に、電気容量Cのコンデンサーとスイッチを、導線で図のように接続する。2本のレールの上に質量mの導体棒を、レールと垂直に置く。さらに鉛直下向きに、磁束密度Bの一様な磁場をかける。ここで導体棒とレールの間の摩擦は無視でき、また導体棒がレールの上を滑る際、導体棒とレールは常に直交しているものとする。さらに、この回路を流れる電流が作る磁場は無視できるものとし、レール、導体棒、導線の電気抵抗は無視できるものとする。また、導体棒の速度や導体棒に働く力については、図の右向きを正とする。

初めに、スイッチをともに開き、導体棒をレールの上に静止させた。そしてスイッチを開いたまま、スイッチを閉じた。すると、導体棒は動き始めた。


1 スイッチを閉じた直後に、導体棒が磁場から受ける力を求めよ。
2 導体棒が速さvで動いているとき、導体棒に生じる誘導起電力の大きさを求めよ。
3 スイッチを閉じてから十分に時間が経過したとき、導体棒の速度は一定となった。このときの導体棒の速度を求めよ。

次に、一度スイッチを開き、導体棒をレールの上に静止させ、スイッチを閉じた。このとき、コンデンサーに電荷は蓄えられていない。この状態で、スイッチを閉じた。ここで、スイッチを閉じた直後を時刻とする。さらに、時刻からまでの間に、導体棒の重心に手で力を加え、導体棒を等加速度運動させた。ただし、手で加える力の方向はレールと平行な方向で、その大きさは時間とともに変化する。そして時刻の直後に導体棒から手を離したところ、その後導体棒は、時刻での速度のまま等速度運動を続けた。

4 の時刻tにおける導体棒の速度を求めよ。
5 の時刻tにおける抵抗に流れる電流を求めよ。ただし、電池から抵抗に向かう電流の向きを正とせよ。
6 時刻からまでの間に、電池がした仕事を求めよ。
7 の時刻tにおけるコンデンサーに蓄えられた電気量を求めよ。
8 時刻からまでの間に導体棒に流れる電流の向きが反転するために、Tが満たさなければならない条件を求めよ。

以下では、時刻からまでの間に手が導体棒にした仕事と、時刻からまでの間に抵抗で発生したジュール熱が等しい場合を考える。

9 エネルギー保存の法則を使い、Tを、mRBCを用いて表せ。
10 手を離す直前の時刻に、手が導体棒に加える力を、ERBを用いて表せ。

解答 コの字型回路の問題ですが、導体棒に力を加えて加速度をつけるとどうなるか、というところが目新しい問題です。問3と問4の間の問題文に書かれている内容からいろいろなことが考えられるので混乱し易いかも知れません。一挙に全てを解決しようとせずに、一つずつ、手がかりのつくところから攻めて行きましょう。

1 スイッチを閉じると、導体棒には上から下に向かって大きさ電流が流れ、この向きを左手中指の向き、磁場の向きを左手人差し指の向きとすると、左手親指は、左から右へ向きますが、これが導体棒が磁場から受けるの向きです(フレミング左手の法則を参照)Fの値は正となり、
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2 導体棒が右向きに動くと、この向きを右手親指の向き、磁場の向きを右手人差し指の向きとして、右手中指の向き(導体棒中で上向き)誘導起電力が発生します(フレミング右手の法則を参照)誘導起電力の大きさVは、
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3 導体棒の速度が一定になる、ということは、磁場が導体棒にを及ぼさない、ということです。導体棒に電流が流れると磁場は導体棒にを及ぼしてしまうので、このとき、導体棒には電流は流れません。
電池E,抵抗R,導体棒、スイッチを周回する経路について、キルヒホッフの第2法則より、
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4 において導体棒は等加速度運動しているので、その加速度a (題意よりです)として、時刻において導体棒は静止しているので、導体棒の速度vは、
と表せます。
においては、手で加える
がなくなり、導体棒が等速度運動するので、問3と同じ状況になり、導体棒の速度になります。
この
速度は、等加速度運動の時刻における速度なので、
 ・・・@
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5 時刻tにおける抵抗に流れる電流として、電池E,抵抗R,導体棒、スイッチを周回する経路について、キルヒホッフの第2法則より、
4の結果を用いて、
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6 時刻tにおいて、電池の仕事率です。
時刻からまでの間に電池がした仕事は、問5の結果を用いて、
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別解.積分をしなくても、縦軸に仕事率、横軸に時間をとって、電池の仕事率のグラフを描き、3頂点とする直角三角形の面積として求めることができます。

7 時刻tにおいて、導体棒に生じる誘導起電力Vは、問2の結果に問4の結果を代入して、
コンデンサーCの両端の電圧Vなので、コンデンサーに蓄えられた電気量Qは、
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8 時刻tにおいて、コンデンサーCに上側から流れ込む電流,導体棒に上から下に向かって流れる電流とし、問5の結果を用いて、

 ・・・A
とすると、
となる
時刻が、の間に入るためには、
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このとき、においてはにおいてはです。つまり、導体棒がだんだん速くなり、導体棒に生じる誘導起電力が大きくなると、導体棒では上向きに電流が流れ、電池ではなく誘導起電力がコンデンサーの充電を行うようになります。

9 時刻からまでの間に、手が導体棒にした事を,抵抗で発生したジュール熱Hとします。問6よりこの間に電池はという仕事をしています。また、コンデンサーが静電エネルギーを蓄え、導体棒が運動エネルギー ( 3)を得ているので、エネルギー保存より、
題意より、として、
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10 手が導体棒に加えるFとして、導体棒は他に磁場からを受けます。導体棒の運動方程式は、
@,Aより、
 ・・・B
手を離す直前に、手が導体棒に加える
は、として、
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追記.問4の結果とBを用いると、の間に、手が導体棒にした仕事は、



5の結果を用いて、抵抗で発生したジュール熱Hは、
とすると、

となり、当然のことですが、問9と同じ結果が出てきます。


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