東大物理'12年前期[3]

複スリットによる光の干渉を利用して気体の屈折率を測定する実験について考えよう。図3のように、透明な二つの密閉容器 (長さd)を、平面A上にある二つのスリット (スリット間隔a)の直前に置き、Aの後方にはスクリーンBを配置する。ABは互いに平行であり、その間の距離をLとする。スクリーンB上の座標軸xを、Oを原点として図3のようにとる。原点Oから等距離にある。いま、平面波と見なせる単色光(波長λ)を、密閉容器を通してスリットに垂直に照射すると、スクリーンB上には多数の干渉縞が現れる。密閉容器の壁の厚さは無視して、以下の設問に答えよ。

T 密閉容器両方の内部に真空にした場合、光源から二つのスリットまでの光路長は等しいため、単色光はにおいて同位相である。
(1) スクリーンB上の点Px座標をXPの距離をPの距離をとしたとき、距離の差を、aXを用いて表せ。ただし、Laよりも十分に大きいものとする。なお、1よりも十分小さければ、と近似できることを利用してよい。
(2) Pに明線があるとき、XaLλ,および整数mを用いて表せ。

U の容器内を真空に保ったまま、の容器内に気体をゆっくりと入れはじめた。一般に絶対温度T,圧力pの気体の屈折率と真空の屈折率との差は、その気体の数密度(単位体積あたりの気体分子の数)ρに比例する。
(1) 容器内の気体の圧力がpで絶対温度がTのとき、その気体の数密度ρpTk (ボルツマン定数)を用いて表せ。ただし、この気体は理想気体とみなしてよい。
(2) 温度を一定に保ったままの容器内に気体を入れて圧力を上げると、スクリーンB上の干渉縞は、x軸の正方向、負方向のどちらに移動するか。理由をつけて答えよ。

V の容器内を真空に保ったまま、の容器を絶対温度T1気圧(101.3kPa)の気体で満たした。このときの気体の屈折率をnとする。
(1) の容器が真空状態から絶対温度T1気圧の気体で満たされるまでに、それぞれの明線はスクリーンB上を距離だけ移動した。気体の屈折率nを、を用いて表せ。
(2) (1)で、原点ON本の暗線が通過した後、明線が原点Oに来て止まった。気体の屈折率nを、Nを用いて表せ。
(3) 気体の屈折率を精度よく求めるには、測定値の正確さが重要になる。いま、(1)で測定したの正確さで測定でき、(2)で測定したN1本の正確さで数えられるとするとき、気体の屈折率は(1)の方法、(2)の方法のどちらが精度よく求められると考えられるか。理由を付けて答えよ。ただし、とすること。

解答 よく勉強してきた受験生には易しかったかも知れませんが、Vは慎重に考察する必要があります。なお、二重スリットを参照してください。

T(1) 1よりも十分小さいので、問題文の近似を利用して、
1よりも十分小さいので、

 ・・・@
......[]

(2) Pに明線ができる条件は、経路差波長の整数倍になることで、@より、
 ・・・A (光の干渉を参照)
......[]

U(1) 容器内の理想気体について、その体積V,モル数をとして、状態方程式は、
 (Rは気体定数)
気体がモル存在するとき、アボガドロ数をとして、気体分子は個あり、数密度ρは、 (気体分子運動論を参照)を用いて、
......[]

(2) (1)の結果より、気体の屈折率nとして、真空の屈折率1との差が気体の数密度ρに比例することから、比例定数をαとして、
内経路の光路長と、内経路の光路長dと差は、
 ・・・B
明線条件の式Aは、側がだけ増すので、
となり、明線位置Xは、
 ・・・C
となり、より、圧力pを増大させるとXも増大し、干渉縞は上方向(x軸正方向)にずれます。
圧力p絶対温度Tの気体を入れたときの明線位置は、で与えられ、圧力pを上げるとXは増大し、干渉縞はx軸正方向に移動する。 ......[]

V(1) もともと、明線位置は、T(2)より、にありました。
絶対温度T1気圧()の気体で満たしたとき、明線位置Xからに移動したとすると、B,Cより、

......[] ・・・D

(2) Cより、に気体を入れた場合でも、明線間隔です。
原点Oを暗線N本が通過した後、明線が原点Oに来て止まった、ということは、もともと原点()にできていた明線()が、x軸正方向にN本分だけずれた位置に来たということです。Cにおいて、とし、(1)と同様にBを用いると、
......[] ・・・E

(3) Dでが真の値からだけずれて、nだけずれたとすると、

EでN1ずれて、nだけずれたとすると、

(2)
の方法の方が測定値のずれが小さく、精度良く求められる。 ......[]


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