東大物理'07年前期[3]

 図31のように、水面上で、波長lの波が左から右にまっすぐ進み壁に垂直に衝突している。壁に沿った方向をx方向とし、壁には自由にすき間を開けることができるようになっているとする。すき間を通った波を壁の右側の点で観測する。以下の問に答えよ。

T 点Pは充分遠方にあるとし、図31のようにから見たP方向の角度をq とする。問T(1)(2)で開けるすき間はすべて同じ幅とする。また、そのすき間の幅は波長lに比べて小さいので、各すき間からは、そこを中心とする円形波が図の右側に広がっていくと考えてよい。
(1) 壁のの位置にすき間Aを開け、わずかにずれた位置x ()にすき間Bを開ける。すき間Bを開ける位置を少しずつxの正の方向に動かしていくと、になったとき、それまで振動していた点Pでの水面が初めて動かなくなった。blq を用いて表せ。ただし点Pは十分に遠いので、すき間Bから見たP方向の角度もq としてよい。
(2) 問T(1)のようににすき間がある状態で、すき間C ()に開けると、点Pでの水面は振動を始めた。さらにもう一つ、にできるだけ近い位置にすき間Dを開けることによって、点Pでの水面の振動を止めたい。すき間Dx座標を求めよ。
U 次にすき間の幅が広い場合を考えよう。点Pは問Tと同じ位置にあるとする。すき間の一方の端を,他方の端をとする(32)。以下の問については、すき間内の各点から円形波(素元波)が右に広がっていき、その重ね合わせが点Pでの水面の振動になると考えよ。
(1) すき間内のある位置 ()から点Pまでの距離と、すき間の端から点Pまでの距離の差を、q を用いて表せ。
(2) から出た円形波の変位が点Pでゼロである瞬間に、すき間内の各点 ()からくる円形波のすべての変位が点Pで同符号である(強め合う)ためには、すき間の幅wはどのような条件を満たしていなければならないか。
(3) すき間の幅をからまで増やしたとき点Pでの波の振幅はどのように変化するか、理由を付けて答えよ。ただしbは問T(1)で求めた値である。
V 今度は点Pは壁の近くにあるとし、壁との距離をLとする。図33のように、点Pの真正面にすき間を開ける。そのすき間の幅をゼロから増やしていくと、幅がになったとき点Pでの振幅が最大になった。rLlを用いて表せ。

解答T(1) AからPまでの経路とBからPまでの経路の長さの差(経路差)波長の整数倍+半波長になると、両波は干渉して弱め合います。Bx軸正方向に動かして初めて弱め合うのは、経路差が半波長のときです。経路差は右図より,両波が弱め合う条件は、
......[]
(2) Aから来る波とBから来る波は既に弱め合っているので、Cから来る波とDから来る波が弱め合えばよいということになります。すき間Dx座標dとすると、その条件は、両者の経路差半波長ということで、


......[]
U(1) Pが十分遠方にあることから、T(1)と同様に、右図より、距離の差は、 ......[]

(2) すき間の両端での経路差が半波長以下であれば、A ()から出た円形波の変位Pにおいてゼロのときに、すき間の各点からくる円形波の変位が同符号になります(経路差半波長以下ということは、位相差p以下ということです。であればというところから考えてください)
右図より、すき間の両端の点からPまでの経路差なので、
......[] (つまり、T(1)より、です)
(3) U(2)の条件()が満たされている間は、すき間を通過する波の強め合う効果により、wを大きくすると、すき間の幅が広がり通過する波が増えることによって、Pにおける振幅は次第に大きくなり、のときに最大になります。においては、すき間を通過する波の中に打ち消し合う効果が起きて、wを大きくすると、Pにおける振幅は次第に小さくなります。のときに、すき間の下半分を通過する波と上半分を通過する波が逆位相(位相のズレがp)となり、振幅は最小になります(右図)
においては強め合う波が増え、においては打ち消し合う波が増えてくるので、から次第に増加してで最大となり、まで減少する。 ......[]

参考 右図のように、すき間を上半分と下半分に分けて、それぞれから来る波を考え、単スリットの効果を調べます。
下半分の中のの位置から
Pにくる波と、上半分の ()の位置からPにくる波の経路差は、波長lとすると、この経路差による位相のズレd は、T(1)の結果を用いて、
波の周期Tとして、振幅の違いを無視して両波を重ね合わせると、
の値によって、Pにおける波の振幅を評価できます。からまで変わるとき、は、1から0まで変化します。
すき間を
2つに分けるとき、上半分から来る波と下半分から来る波の干渉により、波が強め合う効果は、において最大で、において最小になります。
従って、において、
wを大きくするときにP振幅が大きくなるのは、単スリットとしての効果ではなく、すき間を通過して干渉する波の量が増えることによっているのです。
右図のように、
wがある程度の大きさだとして、すき間をn等分し、各部分からくる波を合成することを考えてみます。すき間を通過する波の振幅が各部分のに比例するとします。から来る波とk番目の部分からくる波の経路差です。とすると、Pにおける合成波は、区分求積法により、



これによると、は振動を表すので、0からwを大きくしていくとき、合成波の振幅が増大して、で最大となり、以後減少し、においてゼロになるという結果が得られます。
V すき間の中心をとして、から来るPに来る波と、からPに来る波は、経路差はゼロなので強め合います。つまり、Pにおいて、上半分から来る波と、下半分から来る波は必ず強め合います。ということは、Pにおける振幅が最大になるのは、すき間の上半分を通過してPに来る波の合成波の振幅が最大になるときです。
U(2)(3)において、のときにPにおける振幅が最大になったのは、すき間の上端とPとの距離、下端とPとの距離の差がになるような位置関係だったからです。
従って図
33においても、すき間の上端とPとの距離、すき間の中心とPとの距離の差が半波長のときに、Pにおける振幅が最大になるはずです。右図より、

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