東大物理'05年前期[2]

 図21のように、ボタン型磁石と薄いアルミニウムの円板を貼り合わせたものを、磁石の磁力を使って鉄釘を介して乾電池の鉄製負電極につるす。乾電池の正極からリード線をのばし、抵抗を介してリード線の他端Pをアルミニウム円板の円周上の点に触れさせると、アルミニウム円板とボタン型磁石は回転を始めた。その後、リード線とアルミニウム円板がすべりながら接触するようにリード線を保持すると、円板と磁石は回転し続けた。ボタン型磁石は、図21のように上面がN極、下面がS極で、電気を通さない。アルミニウム円板の半径をa[m]、乾電池の起電力をV[V]、抵抗の抵抗値をR[W]、アルミニウム円板を貫く磁束密度B[T]は円板面内で一様として、以下の問に答えよ。ただし、リード線とアルミニウム円板の間の摩擦、鉄釘と電池の間の摩擦は無視してよい。また、アルミニウム円板と鉄釘の間の摩擦は十分大きく、これらは一体になって回転するものとする。

T アルミニウム円板とボタン型磁石が回転する方向を、理由を付して答えよ。略図を使ってもよい。ただし、アルミニウム円板を流れる電流は、鉄釘との接合点Qと点Pの間を直接的に流れると考えてよい。

U 図22のように、乾電池のかわりに検流計を置く。アルミニウム円板とボタン型磁石を図22の矢印方向に力を加えて回転させると、検流計に電流が流れた。電流の流れる方向を理由を付して答えよ。

V Uで生じていた起電力E[V]の大きさは、ボタン型磁石の回転の角速度がw[rad/s]のとき、と表せることを示し、係数bを求めよ。ただし、釘は十分細いとしてよい。

W 21において、充分時間が経つとアルミニウム円板とボタン型磁石の角速度はある一定値[rad/s]になる。VBbを用いて表せ。

解答T フレミング左手の法則で考えます。PQの方向に電流が流れます。これが左手中指の向き。アルミニウム円板を通して、ボタン型磁石から釘の方に向かって磁界ができるので、釘の側からアルミニウム円板を見て、手前向きの磁界です。これが左手人差し指の向き。このとき、左手の親指は、釘の側から見て反時計回りの方向を向きます。これが、電流の受ける電磁力の向き。従って、回転方向は、釘の側から見て、反時計回りです。
上から見て、反時計回り ......[]

U 検流計の釘側をC,逆側をDとします。
フレミング右手の法則で考えるなら、釘の側から見て、線分PQは、磁界中を反時計回りに移動します。これが右手親指の向き。釘の側から見て、磁界は手前向きで、これが右手人差し指の向き。このとき右手中指QPを向きます。従って、検流計をDCの方向に電流が流れます。
検流計を釘と逆側から釘の方に向かって流れる
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レンツの法則で考えるのなら、釘の側から見て、線分PQは反時計回りに回転するので、これを妨げる向き起電力が生じます。つまり線分PQが時計回りの方向に力を受けるような起電力が発生します。Tより、PQ方向の電流では反時計回りの力なので、ここでは、QPの向きに電流が流れます。

線分
PQ上の正電荷qの受けるローレンツ力を考えることもできます。釘の側から見て、qは反時計回りに移動するので、反時計回りに電流が流れると考えます。これが左手中指の向き。磁界は釘から見て手前向き。これが左手人差し指の向きです。このとき、左手親指QPの方向を向きます。フレミング左手の法則より、qの受けるローレンツ力の向きはQPです。これが起電力の向きであり、電流の向きです。

V 微小時間の間に線分PQの回転するです。半径a頂角の扇形の面積は、です。この面積を貫く微小磁束は、
よって、電磁誘導の法則より、起電力の大きは、
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W 回転の角速度が一定値になるということは、アルミニウム円板の円周の接線方向には力は働かないということを意味します(等速円運動参照)。線分PQ間に電流が流れると接線方向にが働いてしまうので、線分PQ間には電流が流れていないことがわかります。
乾電池が接続されているのに電流が流れない、ということは、乾電池の起電力を打ち消す起電力が線分PQ間に発生しているということです。Vより、アルミニウム円板が釘側から見て反時計回りに角速度で回転するとき、QPの向きに電流を流す起電力が発生します。従って、
[rad/s] ......[]


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