京大物理'09[3]

 次の文を読んで、  には適した式を、{  }からは適切なものを選びその番号を、それぞれの解答欄に記入せよ。また、問1〜問3では指示にしたがって、解答をそれぞれの解答欄に記入せよ。

(1) ホイヘンスの原理を用いると波の多くの現象が理解できる。図1に示すように、媒質T ()を速さで進んだ波は、媒質2 ()を速さで進み屈折を起こす。角度で入射した線分ABを含む波面上の点Aは時刻に境界に到達した。その後時刻に、点Bは境界上の点Sに達し、点Aは点Cに到達する。この間()の時刻t に境界に達する点Pと点Sの間の距離は、時刻t を用いると あ である。また時刻t に境界上の点Pから放射され、時刻に点Qで波面CSに接する素元波の半径は、時刻t を用いると い である。以上から、媒質2の屈折角は、を用いると う となる。
(2) 浅い海の上を進む船は、くさび型の波面を伴う場合がある。(1)の結果を利用して、このくさび型の波面ができる条件を考えよう。船は大きさを持たず、図2に示すように、静止した水の上を一定の速さVX軸上を進んで波を発生させたとする。時刻t での船の位置を点Pとする。また、波の速さはcとする。船は、各時刻に変位が同じ(位相が同じ)である波長λの素元波を放射しながら進むとする。すなわち、図2の点Pから放射される素元波を、図1の点Pから放射される素元波と同様に扱うこととする。時刻に船が原点Sに到達した。このとき、図2のように、船は後方に原点を通るくさび型の波面を伴っていた。
1 波面とX軸がなす角度θ に対してを求めよ。くさび型の波面ができるときに、船の速さVと波の速さcが満たす条件式を導け。

深い海の上を進む船の後ろにできる美しい波模様は、参考図のようにくさび型領域に限られる。このくさび型の領域は、問1の結果とは違って、船の速さによらない一定の角度を持つ。この違いは、波長より水深が深い場合には波長が短いほど水の波の速さが遅いという性質があることと、船が作る波は波長が異なる多くの波が重ね合わさっていることが原因である。この違いについて考えよう。
(3) はじめに、平面波の性質を調べよう。x軸の正の方向に進む平面波の波長をλ,振動数をf とする。このとき、時刻t,位置xでの波の変位hは、三角関数を使ってと書ける。ここで、aは平面波の振幅である。ただし、時刻,位置での波の変位を0とおいた。この式に現れるは「波数」と呼ばれており、これをkとおく。また、角振動数を用いると、次のように表現が簡単になる。
   (i)
座標xと時刻t を固定したときのの値をその位置xと時刻t での波の位相と呼ぶ。位相が一定の値()である位置xは、の関係を満たしながら、x軸の正の方向に一定の速度cで進む。この速度は平面波の「位相速度」と呼ばれている。波数kと角振動数ωを用いて表すと え となる。
2 図3には、式(i)で表される波の時刻での変位hが描かれている。図3を参考にして、時刻におけるこの波の変位hの概略図を、の範囲で解答用紙の所定欄に書き入れよ。ただし、縦軸と横軸の数値と記号は図3と同じように記入せよ。

(4) 次に、波数kと角振動数ωがわずかに異なる2つの平面波、波1と波2の重ね合わせを考えよう。波1と波2の波数を,角振動数をとする。また、波1と波2の振幅は等しく、aとする。ただし、は、それぞれ波数k,角振動数ωに比べその大きさが十分小さい定数であり、とする。このとき、波1の変位を,波の変位をと表すと、重ね合わせた波の変位は、公式を用いて、以下のように書ける。
 お 
重ね合わせた波の変位hは、平面波の部分と、その振幅の変動を表す部分 お )の積になっている。この振幅の変動に着目して式(i)と比べると、この振幅の変動が速度で伝わることがわかる。この振幅の変動が伝わる速度を「群速度」と呼びとおく。
4には、重ね合わせた波の変位の時間変化の一例を描いた。ここで、振幅の変動を破線で表し、その腹と節の伝搬を矢印で、またにおける平面波の部分の位相と同じ位相を持つ点の位置を黒丸で、それぞれ示した。図4は、平面波の部分は位相速度cで伝わり、その振幅の規則的な強弱は群速度で伝わることを表している。
群速度は波の形やその発展を決めるために重要であるとともに、波のかたまりや波のエネルギーの伝搬を理解する上でも重要な物理量である。
1と波2の位相速度が等しい場合、位相速度cと群速度の関係は{か:@  A  B }である。このとき、の点で観測される波の変位hの時間変化を、図5に示す。音のうなりと同じように変位hの振動の強弱が規則的に観測される。単位時間当たりのうなりの数は角振動数を用いると き である。
3 船の作る波の波長に比べ水深が十分深い場合、角振動数ωと波数kの間には、の関係が成り立つ。ここで、gは重力加速度の大きさである。このとき、群速度と位相速度cをそれぞれ計算し、比を求めよ。
必要ならば、に対する次の近似式を用いよ。

深い海の上を進む船は多くの波長の波を作るので、重ね合わせの結果、振幅の大きな変動は群速度で伝わる。問3で求めた群速度と位相速度の関係から、波の伝わる範囲が狭まることが予想できる。さらに波長の異なる多数の波の効果を考慮すると参考図のような波の模様が作られることを示すことができる。この船の作る波は、ケルビン波と呼ばれる。


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解答 問題文は高度な内容を含んでいますが、問題そのものは標準的です。

(1)() PからBSに垂線PHを下ろすと、より、
......[]
()  ......[]
()  より、
......[]
(2)1 より、
......[]
くさび型波面ができる条件は、より、
......[]
(3)() 位相が一定である位置の進む速度とは、波の伝わる速さにほかなりません。波の公式を用いて、
......[]
2 時間(周期)経過後に波はx軸正方向に進んでいます。波の変位hの概略は右図実線。
(4)()  公式において、
とすると、より、

......[]
() 波1,波2位相速度が等しいので、
()

よって、

A ......[]
() として、単位時間当たりのうなりの数は、
......[]
3 
位相速度cは、
......[]

よって、群速度は、
......[]
......[
]


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