東京医科歯科大物理'10[2]

金属導線中の電子の運動について考えてみよう。
右図のような半径
r,長さl の円筒状の導線の両端AB間に電圧Vを加える。ただし、Aの電位よりBの電位の方が高いものとする。また、電子の質量をm,電子の電荷を (),導線の抵抗率をr,導線の単位体積中の自由電子の数をn,円周率をpとする。
以下の各問いに答えよ。


1 この導線の電気抵抗RrlVmernpのうちの必要なものを用いて表せ。
2 この導線中に生じている電場の大きさErlVmernpのうち必要なものを用いて表せ。また、電場の向きはABBAのどちらであるか答えよ。

自由電子は電場の存在下では平均するとAB方向に運動しているので、以下では一次元の運動として考える。また、導線中を移動する自由電子には速さに比例する抵抗力が働くものとし、比例定数をkとする。

3 自由電子の運動の向きは、ABBAのどちらであるか答えよ。
4 加速度をa,速さをvとして、自由電子の運動方程式を求めよ。ただし、問3で求めた電子の運動の向きを正とする。
5 vが小さいとき、電子は問3の向きに加速度運動しているが、vがある大きさに達すると等速度運動をするようになる。そのときのvの大きさrlVmenkpのうちの必要なものを用いて表せ。
6 定常電流では、自由電子が導線中を平均してで働いているとして、導線を流れる電流の大きさIrlVmenkpのうちの必要なものを用いて表せ。
7 導線の抵抗率rrlmenkpのうちの必要なものを用いて表せ。

抵抗力に現れる比例定数kの意味について、自由電子と金属原子(陽イオン)の衝突から考えてみよう。
自由電子の運動について、定常電流ではつぎのように考えてよいだろう。

(1) 自由電子は、熱振動している金属原子と衝突すると、それまでに電場から得たエネルギーを全て失う。しかし、電場から力を受けているので、再び問3の向きに動きだす。
(2) それぞれの自由電子が金属原子と衝突する時刻や、衝突後つぎの金属原子と衝突するまでにかかる時間は、さまざまである。ここでは、長時間での平均を考え、ある自由電子がで速さが0であり、時間T(ごと)に衝突を繰り返すとする。

8 自由電子の平均の速さrlVmenTpのうちの必要なものを用いて表せ。
9 一つの自由電子の運動エネルギーの時間変化の様子をグラフに示せ。
10 kmTを用いて表せ。
11 一般に金属導線の抵抗率は、温度上昇とともにどのように変化するか。その理由を問7,問10の結果も考慮に入れて説明せよ。

解答 抵抗モデルに関する基本問題です。電流・オームの法則を参照してください。

1 導線の電気抵抗は、導線の断面積であることから、
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2 導線内には、電位の高い方から低い方に向かって一様な電場が生じていて、電場の大きさは、 ......[]
電場の向きは、BA ......[]

3 自由電子負電荷を持っているので、電場と逆向きのを受け、運動の向きは、AB ......[]

4 自由電子が受けるは、大きさ電気力(向きはAB)、これと逆向きの抵抗力で、抵抗力は向きも含めて自由電子加速度aとして運動方程式は、
......[]

5 問4の運動方程式において、最初速さvに近いうちはですが、vが大きくなるに従ってaは減少して0に近づいてきます。になってしまうと、自由電子は等速度運動するようになります。このときの速さとして、
......[]

6 導線を流れる電流の大きさは、導線の断面積であることから、
......[]

7 問1、問6の結果と、オームの法則より、
抵抗率rは、 ......[]

8 抵抗力を考えないときの自由電子の運動方程式は、問4の運動方程式からの項をとって、

時間Tの間、自由電子等加速度運動を続けるのですが、時間t ()経過後の自由電子速度vは、
 ・・・@
自由電子の平均の速さは、の中間における速度と考えられ、
......[]

9 時間t ()経過後の自由電子運動エネルギーは、@より、
以降は、これを繰り返すことになります。グラフは右図実線。

10 問5の等速度運動時の速さが、問8の平均の速さに一致すると考えます。
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11 問7,問10の結果より、導線の抵抗率は、
 ・・・A
となり、時間Tに依存します。
金属原子は隣接する原子と結合していて自由に動き回ることができないのですが各原子ごとに熱振動しています。金属原子は、
自由電子と衝突すると自由電子からエネルギーをもらって熱振動のエネルギーが次第に大きくなってきます。結果的に、金属の温度が上昇してジュール熱を発生するのですが、温度が上昇して熱振動が激しくなると、金属原子が自由電子と衝突しやすくなり、自由電子が衝突後に次の金属原子と衝突するまでにかかる時間Tがだんだん短くなります。すると、Aより抵抗率rは大きくなります。

金属導線中を電流が流れると、金属導線の温度が上昇し、金属原子の熱振動が激しくなり、時間
Tが短くなる。その結果、金属導線の抵抗率は温度上昇とともに大きくなる。 ......[]


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