阪大物理'10年後期[1]

1のように、半径の等しい二つの円筒12が、互いに逆向きに同じ角速度で回転している。その上に質量M,幅が一定で長さの厚さを無視できる一様な板を水平に乗せたとき、この板がどのような運動をするか考察しよう。円筒の長さは板の幅より大きいとする。図1は板の重心Gを含み、円筒の回転軸に垂直な断面を表している。円筒は同じ高さで、回転軸を平行に距離だけ離れて置かれ、板の長さ方向が円筒の回転軸に垂直になるように板を乗せた。円筒と板の接触は、円筒の回転軸に平行な方向には一様であるとすると、板の運動は図1で示した断面で考えることができる。図のように板の長さ方向に沿って水平方向にx軸をとり、板の運動はx軸上に限定されるとする。板と円筒1との接触の断面上の位置を点Pとし、円筒2との接触の断面上の位置を点Qとする。点Pと点Qの中点に原点Oをとり、図の右向きをxの正の向きとする。板と円筒の間の動摩擦係数は、接触位置の板と円筒の相対速度の大きさによらずである。重力加速度の大きさをgとする。

T.最初、板の重心Gが原点Oと一致するように板を乗せると、板は静止したままであった。

1 円筒12が板に及ぼしている垂直抗力をそれぞれとし、鉛直方向の力のつり合い、重心Gのまわりの力のモーメントのつり合いを考え、およびを求めよ。

次に、図2のように板の右端を手でゆっくり右方向(x軸の正の向き)に引っ張り、d ()だけ移動させ静止させたところ、右端を引く力はFとなった。

2 Fの大きさを求めよ。
3 板をdだけ移動させるまでに、手が板にした仕事を求めよ。

その後、静かに手を離すと板は左右に往復運動を始めた。円筒の角速度は十分大きく、往復運動の速さは、接触の位置における円筒と板との相対速度の大きさに比べて、十分に小さいとする。板が動いている場合の力のモーメントのつり合いの条件は、板が止まっている場合と同じと考える。

4 この往復運動の振幅および周期を求めよ。
5 板の速さが最大となるときの重心Gの座標を求め、そのときの運動エネルギーを求めよ。

U.図1の状態から、図3のように大きさが無視できる質量mのおもりを板の上に置くと、おもりは板の上をすべることなく、板と一緒に運動を始めた。前の運動と同じく、円筒の角速度は十分大きく、運動の速さは接触の位置における円筒と板との相対速度の大きさに比べて十分に小さいとし、板が動いている場合の力のモーメントのつり合いの条件は、板が止まっている場合と同じと考える。

6 おもりを乗せた直後に、板とおもりとの全体の重心の位置が、となるおもりの座標を求めよ。ただし、dはT.で考えた図2dと同じとする。
7 板とおもりとの間の静止摩擦係数をμとすると、おもりが板の上をすべらずに、板が円筒から落下することなく、往復運動を続けるためのμおよびが満たすべき条件を求めよ。
8 この往復運動の振幅および周期は、問4の場合の振幅および周期のそれぞれ何倍になるか求めよ。
9 重心の速さが最大となった瞬間に、おもりをはずした。その後、板は往復運動を続けた。この往復運動の振幅は、おもりが乗っている場合の何倍になるか求めよ。


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解答 力のモーメントの古典的な問題ですが、問7以降はかなり難しくなります。問5あたりでも、「仕事」や「エネルギーの原理」の意味をしっかりできていないと、まごつくかも知れません。

T.問1 板に鉛直方向に働くは、上向きの垂直抗力と、下向きの重力です。これらの力のつり合いより、
 ・・・@
重心Gのまわりの力のモーメントは、右回りの,左回りので、これらのつり合いより、
以上より、
......[]

2 板に水平方向に働くは、右向きのF,右向きの動摩擦力,左向きの動摩擦力です。これらのつり合いより、
 ・・・A
鉛直方向の力のつり合いは、@のままです。
原点
Oのまわりの力のモーメントは、右回りの,左回りの,右回りので、こららのつり合いより、
 ・・・B
(@+B÷L)÷2より、

......[]

3 板の重心のx座標xとすると、問2dxに置き換えて、右向きの外力の大きさFは、
手が板にした仕事Wは、
......[] (エネルギーの原理を参照)
別解.F-x図は、を結ぶ線分です。この2点と3頂点とする三角形の面積から、でもOKです。

4 往復運動中の重心Gx座標xとすると、板に水平方向に働くは、右向きの動摩擦力,左向きの動摩擦力で、板の加速度aとして、板の運動方程式は、
 ・・・C
鉛直方向の力のつり合いは@のまま、力のモーメントのつり合いはBのdxに置き換えた式になります。CはAのFに置き換えた式なので、問2の結果を利用して、
 ・・・D
これは、
角振動数単振動を表します。のとき、板から静かに手を離したので、ここが振動端で、単振動の振動中心が力のつり合いの位置であることから、
往復運動の
振幅d周期Tは、 ......[]

5 板は単振動するので、板の速さが最大になるのは、
板の重心Gx座標が、 ......[]
のとき(振動中心に来たとき)です。このときの運動エネルギーは、振動端での位置エネルギーである問3仕事に一致し、 ......[] (エネルギーの原理を参照)
別解.公式より、このときの板の速さvは、
このときの運動エネルギーは、

U.問6 質量Mの板の重心はにあります。おもりの位置とすると、板とおもりの重心x座標について、
......[]

7 おもりを板の上に置いた時点で、になるので、水平方向のつり合いが崩れ、板に左向きのが働いて、板が左に動き出すことに注意しましょう。
板がおもりに及ぼす静止摩擦力fとします。作用反作用の法則より、おもりは板に静止摩擦力を及ぼします。
板の
加速度aとして、板の運動方程式は、
 ・・・E
おもりも加速度aで運動するので、おもりの運動方程式は、
 ・・・F
板に働く鉛直方向の力のつり合いより、
 ・・・G
板の重心Gx座標xのとき、板+おもりの重力の作用点のx座標です。原点Oのまわりの力のモーメントのつり合いより、
 ・・・H
(G+H÷L)÷2より、
E+Fより、

 ・・・I
Dと比較すると、角振動数は問4の単振動と変わらず、振動中心がになったことがわかります。おもりを板の上に置いたときの板の重心G位置が振動端になるので、振幅dのままです。板が往復運動をするとき、板が最も左に来るのは、板の重心Gx座標のときです。 ・・・()
板が円筒から落下しない条件は、このときに、(i) 板+おもりの重心が円筒1との接点よりも左に来ない、かつ、(ii) 板の右端が円筒2との接点よりも左に来ないことです。
まず、おもりを板の上に置いたとき、板+おもりの重心の
位置が、円筒2との接点の右側に来てしまうと、この時点で板が傾いて落下してしまうので、板+おもりの重心の位置は、円筒2との接点から左側にあります。つまり、
板の重心の
x座標のとき、板+おもりのx座標で、円筒1との接点のx座標と比べると、であって、(i)の条件は必ず満たされます(板+おもりの重心の単振動では、原点Oが振動中心で振幅dです)
また、このとき、
(ii)の条件より、板の重心Gと右端との距離は、最も左に来るとき板の重心Gと円筒2との接点との距離以上でなければなりません。よって、
 ・・・J
おもりが板の上で滑り出さない条件(摩擦力を参照)を考えます。F,Iより、
ですが、静止摩擦力の大きさが最大になるのは、のときで、このとき、なので、滑り出さないために最大静止摩擦力以下であるとして、

Jと合わせて、求める条件は、
......[]
注意.なので、 ()です。という条件も必ず満たされています。

8 問7中の()の検討より、この往復運動の振幅および周期ともに問4の場合と同じです。
振幅が1倍、周期も1 ......[]

9 重心速さが最大になるのは、振動中心にくるときです。おもりをはずず直前では、板の重心Gx座標はです。振動中心に来た瞬間におもりをはずすと、おもりの運動エネルギーが失われて、この瞬間の板の運動エネルギーだけが残ります。
おもりを板の上に置いたときに、板は振動中心からdずれた位置にいるので、おもりをはずした瞬間の板の運動エネルギーは、問5の結果と同じくです(板だけで考えてください。おもりをはずすからと言って、おもりの運動エネルギーが板の運動エネルギーに加わるわけではありません)
ですが、おもりをはずして板だけの単振動になってしまうと、板の単振動の振動中心は原点
Oに戻ります。ということは、おもりをはずした瞬間に、板は振動中心からdだけ変位していて、位置エネルギーをもつことになります。板だけになったときの振幅Aとすると、振動端での板の力学的エネルギーは、問5の結果でとして、です。力学的エネルギー保存より、
......[]


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