名工大物理'10[2]

1に示すように、磁束密度が一定の一様な鉛直下向きの磁界(磁場)の中に、充分に長い導体棒abと導体棒cdを間隔で平行に並べてレールをつくり、水平面に対して傾斜角が ()となるようにレールの端点bdを持ち上げた。このとき、レールの下端acとレールが垂直になるように配置してある。端点acは、の抵抗Aと起電力の直流電源で構成される電気回路に接続されている。以下の問いに答えよ。ただし、レールの電気抵抗、直流電源の内部抵抗、レールと導体棒の間の摩擦、および、レールに流れる電流がつくる磁界の影響は無視する。また、重力加速度は鉛直下向きにとする。

1 レール上に、長さ,質量で、の抵抗を持つ導体棒Xをレールと垂直になるように静かに置いたところ、導体棒Xはレール上に静止した。
(1) 抵抗Aを流れる電流の大きさを求めよ。
(2) 抵抗Aにおける消費電力を求めよ。
(3) 磁束密度の大きさを求めよ。

2 次に、図2示すように、レールの端bdの抵抗Bでつないで、導体棒Xをレールと垂直になるように静かに置いた。すると、導体棒Xは、acと平行を保ったままレール上を動き始めた。ただし、導体棒Xと回路を流れる電流間に働く力については無視できるものとする。
(4) 導体棒Xは、レール上を昇るか降りるか。解答欄の選択肢のうち、該当する方を丸で囲め。
(5) 導体棒Xが動き出した瞬間に、導体棒Xを流れる電流の大きさを求めよ。
(6) 導体棒Xが動き出さないようにするためには抵抗Aの大きさを、もとの抵抗値Rの何倍にしておけばよいか求めよ。

3 次に、抵抗Bを取り除き、図1の状態に戻してから、図3に示すように、長さ,質量の抵抗を持つ導体棒Xと、長さ,質量の抵抗を持つ導体棒Yとを、絶縁体の軽いひもでつないで、導体棒Yが上になるようにレール上に静かに置いた。すると、ひもがたるむことなく、導体棒Xと導体棒Yがレール上をacと平行を保ったまま下向きに動き出し、充分時間が経過した後、導体棒Xと導体棒Yの速度が一定になった。以下の問いに答えよ。ただし、導体棒Xと導体棒Yはレール上にあるものとし、それぞれの導体棒を流れる電流間に働く力については無視できるものとする。
(7) 導体棒Xと導体棒Yの速度が一定になったとき、導体棒Xを流れる電流の大きさは、抵抗Aを流れる電流の大きさの何倍になるか求めよ。
(8) ひもがたるむことなく導体棒Xと導体棒Yが運動しているので、それぞれの導体棒の速度は等しい。その速度をEMRgαを用いて表せ。また、このときの抵抗Aを流れる電流の大きさをERを用いて表せ。なお、解答欄には、答えを導く過程も記せ。その際に、問題文に示される以外の量が必要であるならば、必要な量を新たに定義して用いてもよい。
(9) ひもの張力をMgαを用いて表せ。


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解答 斜面になっているコの字型回路に、ひもで結んだ2本の導体棒を渡して磁場中で落下させて等速度運動に至ったとき、ひもの張力はどうなるか、という問題です。ややこしいですが、基本に即して考えればOKです。

1(1) 回路の合成抵抗は、抵抗2個直列になっているので,抵抗Aを流れる電流の大きさは、 ......[]
(2) 抵抗Aにおける消費電力は、 ......[]
(3) 導体棒Xに働くは、鉛直下向きの重力と、磁場電流に及ぼす電磁力です。電磁力の向きは、フレミング左手の法則より、図1で水平方向右向き。電磁力の大きさは、磁束密度の大きさをとして、
斜面に沿う方向での力のつり合いより、
 ・・・@
......[]

2(4) 導体棒Xと抵抗Bの並列接続による合成抵抗より,抵抗Aの直列接続による合成抵抗,抵抗Aに流れる電流は、,導体棒Xと抵抗B電流抵抗値に反比例し21になるので、導体棒Xに流れる電流は、 ・・・A
1のつり合いの状態から、導体棒Xに流れる電流が、からに減るので、導体棒Xに斜面に沿って上向きに働く電磁力の大きさも小さくなり、導体棒Xに働く合力は斜面に沿って下向きになります。
「昇る」と「降りる」の選択肢では、「降りる」
......[] の方を丸で囲みます。
(5) Aより、導体棒Xを流れる電流の大きさは、 ......[]
(6) 導体棒Xが動き出さないようにするためには、導体棒Xに流れる電流にする必要がありますが、このとき、抵抗Bに流れる電流,抵抗Aに流れる電流,回路の合成抵抗,導体棒Xと抵抗B合成抵抗なので、抵抗A ......[]

3(7) ひもがたるまないことから、導体棒Xと導体棒Yは同じ速度で運動し、導体棒Xと導体棒Yに発生する起電力も等しく(フレミング右手の法則を参照。起電力の向きはab側からcd側に向かう向き)なり、導体棒Xと導体棒Yの抵抗両端間の電圧も等しくなります。導体棒Xと導体棒Y電流抵抗値に反比例し21になります。抵抗A電流は、導体棒Xと導体棒Y電流の和になるので、問2(4)と同様に、導体棒Xを流れる電流の大きさは、抵抗Aを流れる電流 ......[]
(8) 導体棒X速さ,抵抗Aを流れる電流とすると、抵抗A電圧降下(7)の結果より導体棒X抵抗での電圧降下,導体棒Xを経て一周する回路の起電力キルヒホッフの第2法則より、
 ・・・B
導体棒X磁場から受けるの大きさは,向きは水平方向右向きで、このの斜面に沿う方向の成分は,導体棒X速度が一定になったとき、張力の大きさをとして、力のつりあいより、
 ・・・C
導体棒Yに流れる電流で、導体棒Y磁場から受けるの斜面に沿う方向の成分は力のつり合いより、
 ・・・D
C+Dより、
 ・・・E
@より、 ・・・F
これより、
Eに代入して抵抗
Aを流れる電流の大きさは、
......[] ・・・G
また、Fより、 ・・・H
G,HをBに代入して、
......[]
(9) G,HをCに代入して、張力は、
......[]


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