横浜市大物理'08[2]

図に示すように、起電力の電池、電気容量のコンデンサー、抵抗値の抵抗、および切り替えスイッチSからなる電気回路がある。この回路の各コンデンサーは、はじめに電荷をもっていなかったものとして、以下の問いに答えよ。
(1) スイッチSaに接続した状態で充分時間が経過した。コンデンサーに蓄えられた電気量と静電エネルギーを求めよ。
(2) 次にスイッチSaからbに切り換えた。切り換えた瞬間に、抵抗に流れ始める電流を求めよ。
(3) スイッチSbに切り換えてから充分時間が経過した後、コンデンサーの極板間にかかっている電圧と蓄えられている電気量を求めよ。
(4) スイッチSbに切り換えてから充分時間が経過するまでに失われた静電エネルギーを求めよ。
(5) 失われた静電エネルギーはすべて抵抗で消費されたとする。抵抗で消費された電気エネルギーWを求めよ。
上記の操作を1回目とし、以下、とおく。スイッチSを再びaに接続した後bに接続する。この操作を2回目とする。ただし、スイッチの切り換えは十分な時間が経過した後に行うものとする。
(6) 2回目の操作から充分時間が経過した後、コンデンサーの極板間にかかっている電圧と蓄えられている電気量を求めよ。
(7) この操作をn回繰り返した後、コンデンサーの極板間にかかっている電圧をとする。の関係を求めよ。また、nで表せ。さらに、操作を繰り返し行っていくと、電圧はどのような値に近づくか答えよ。

解答 (7)2項間漸化式等比数列の極限の問題です。

(1) コンデンサーの公式 (コンデンサーの過渡現象を参照)より、
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(2) スイッチSaからbに切り換えると、で一周する電流経路では電流は同じ値になります(キルヒホッフの法則を参照)両端の電圧両端の電圧0で、直列接続された抵抗電圧がかかるので、抵抗に流れ始める電流は、オームの法則より、
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(3) スイッチSが切り換えられる瞬間にが蓄えている電気量です。スイッチSを切り換えてから充分時間が経過すると、この電気量並列接続されたに蓄えられます。両端の電圧は、公式より、
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が蓄えている電気量は、
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(4) スイッチを切り換える瞬間の静電エネルギー(1)です。
充分時間が経過したとき、容量の両端の電圧となるので静電エネルギーは、
よって、
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(5) 先にも書きましたが、スイッチSaからbに切り換えると、で一周する電流経路では電流は同じ値になります。抵抗で消費された電気エネルギーは、なので、抵抗で消費された電気エネルギーWは、(4)を、に分けたうちのの分になります。よって、
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(6) 2回目の操作から充分時間が経過した後、並列接続された容量に蓄えられる電気量は、1回目の操作後にが蓄えている電気量と、スイッチSa側にしている間にが蓄えたの和になります。よって、両端の電圧は、
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が蓄えている電気量は、
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(7) 操作をn回繰り返した後、並列接続された容量に蓄えられる電気量は、回目の操作後にが蓄えている電気量と、スイッチSa側にしている間にが蓄えたの和になります。よって、両端の電圧は、
より、
 ・・・@ (2項間漸化式を参照)
に置き換えた式:
 ・・・A
Aを解くと、
@−Aより、
これより、は、公比:の等比数列です。初項は、

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より、のとき、
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追記.この問題の電気回路は、switched capacitorと呼ばれ、半導体集積回路上に精密な抵抗を制作する技術として実用化されています。
半導体集積回路、特に、アナログ回路と呼ばれる連続的な電流変化、あるいは、電圧変化を扱う回路の製造工程においては、ウエハと呼ばれる円形のシリコン
(ケイ素,原子番号14)基板上に抵抗を作ると、抵抗値が大きくバラついてしまい、安定した回路を製作することが困難です。
本問のスイッチ切り替えにより、
電荷が電池側からコンデンサー側に送られますが、単位時間当たりの電荷移動量、つまり、電流は、スイッチの切り換え周波数とコンデンサーの容量比で決まります。半導体製造工程のバラつきの影響を受けません。これを抵抗として利用しようというのが、switched capacitorです。
switched capacitorの利用により、高性能なフィルター回路(ある周波数の交流信号だけを取り出すための回路)を製作することができます。このフィルターをswitced capacitor filter (SCF)と言います。

実用化されている技術で、入試問題のネタとしても見かけるのが、チャージ・ポンプと呼ばれている昇圧回路
(電源電圧よりも高い電圧を取り出す回路)です。時計などの機器を乾電池1本で動作させる(機器の内部は3V程度で動作するため、電池の1.5Vから3V電圧を作る必要がある)ために用いられている技術です。
右図のような回路で、最初、図
(a)のように2個のスイッチがa側に倒れ、コンデンサーを充電します。この時点でコンデンサー両端の電圧電源電圧になります。
次に、図
(b)のように2個のスイッチを同時にb側に倒し、コンデンサーを充電します。この時点でコンデンサー両端の電圧電源電圧になります。
は直列接続されているので、右図の
X-Y間の電圧となり、元の電圧2倍の電圧が得られます。
実際には、必要な
電流X-Y間から取り出すために、容量を大きくする必要があり、抵抗の影響により、即座に電圧になるわけではなく、安定するまでに若干の時間が必要です。


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