立命館大物理'08[3]

次の文章の あ  け に適切な数式を記せ。 ア  ウ には選択肢より適切な番号を選べ。
水平面上に置かれ、一定の角速度で回転する半径の円板を考える。円板上にはレールが敷かれている。レールの上には質量の小球があり、レールの上を移動することができる。このとき、以下の問いに答えよ。

[1] 図−aのようにレールが直径AB上に設置され、小球は、円板の中心Oに固定された支柱と、自然長,バネ定数のバネで結合されている。円板とともに回転している観測者から見て小球が静止しているとき、小球から中心Oまでの距離がであった。
小球に働く遠心力の大きさは あ である。摩擦が無視できるとき、バネの弾性力とのつり合いから距離

となる。さらに、小球が円板上にとどまるためには、バネ定数
k

でなければならない。

[2] 図−bのようにレールが弦CE上に設置され、小球は、弦CEの中点Dに固定された支柱と、先と同等に自然長,バネ定数kのバネで結合されている。弦CEの中心角である。円板とともに回転している観測者から見て小球が静止しているとき、小球から中点Dまでの距離がであった。
小球と円板(レール底面)との摩擦は無視できるが、小球とレール壁面の摩擦は無視できず、その静止摩擦係数がmであるとする。小球に働くレール方向の遠心力の大きさは お である。レール壁面から横方向に小球が受ける垂直抗力の大きさは か であるので、レール方向の最大(静止)摩擦力の大きさは、 き である。
このとき、小球が円板上で静止状態を保ち、動き出さないための距離の上限は、

である。ただしバネ定数
kは十分大きく、小球は常にCD上にとどまるとする。
ここで、図−
a,図−bの円板からそれぞれバネと支柱を取り除き、図−,図−のように小球がレール上を移動することができるようにした。

[3] ニュートンの運動の第一法則は、次のように表現される。
物体が外部から力を受けないか、あるいは外部から受ける力の合力がゼロである場合、静止している物体はいつまでも静止し続け、運動している物体は等速直線運動を続ける。
これを慣性の法則という。例えば、図−,図−においては、回転する円板上でなく円板の外で静止している観測者から見たときに慣性の法則が成立することに注意しよう。
さて、図−において、小球が点
Aから点Bに向かって直径上のレールを滑る。小球が中心Oを通過した瞬間にレールを取り払い、小球が円板上を摩擦なく自由に運動できるようにした。その後の小球は、円板の外で静止している観測者の視点では慣性の法則に従って運動を続ける。この運動を中心Oで円板とともに回転している観測者から見ると、 ア のような運動として観測される。

[4] 図−において、小球が点Cから点Eに向かって弦CE上のレールを滑る。小球が中点Dを通過した瞬間にレールを取り払い、小球が円板上を摩擦なく自由に運動できるようにした。この運動を中心Oで円板とともに回転している観測者から見ると、 イ のような運動として観測される。

[5] 図−において、小球が点Cから点Eまで弦CE上のレールを滑る。点Eを通過した後、小球はそのままレールから飛び出した。その後の小球は、円板の外で静止している観測者から見ると、 ウ のような運動を行う。ただし、円板上面と水平面の段差は無視できるとする。
 ア の選択肢

 イ の選択肢

 ウ の選択肢


解答 [3][4][5]で高校範囲外のコリオリのが出てきますが、問題文中に書かれている考え方に沿って解答できるでしょう。

[1]() このとき、外部から見ると、小球は半径の円軌道上を角速度w 円運動しています。円板とともに回転している観測者から見て小球に働く遠心力です。
......[]
() 小球にはバネの弾性力が働きます。
円板とともに回転している観測者から見て小球に働く力のつり合い

......[]
(うえ) より、


() () ......[]

[2]() このとき、外部から見ると、小球は半径の円軌道上を角速度w で円運動しています。円板とともに回転している観測者から見て小球に働く遠心力です。
CE遠心力のなす角をq として、小球に働くレール方向の遠心力の大きさは、

......[]
() 小球が壁面から受ける垂直抗力として、レールに垂直な方向での力のつり合い
......[]
() 最大静止摩擦力は、

......[]
(くけ) 小球がレール方向に受けるは、方向に働くバネの弾性力,円板とともに回転している観測者から見て、遠心力のレール方向成分(方向)静止摩擦力です。問題文中に「バネ定数kは十分大きく」という記述があるので、バネの弾性力遠心力よりも大きいと考えられます。従って、静止摩擦力方向に働くと考え、力のつり合い

小球が滑り出さない条件は、静止摩擦力の大きさ最大静止摩擦力以下となること(摩擦力を参照)です。よって、

()で割ると、

() () ......[]

[3] 円板は回転を続けるのに、外部から見て、小球は等速直線運動を続けるように見えるので、円板とともに運動する観測者からは、円板の回転に対して遅れて行く方向にそれて行くように見えます。よって、(2) ......[]

[4] [3]と同様に、円板は回転を続けるのに、外部から見て、小球は等速直線運動を続けるように見えるので、円板とともに運動する観測者からは、円板の回転に対して遅れて行く方向にそれて行くように見えます。よって、(2) ......[]

[5] Eから飛び出す瞬間に、小球は方向の速度成分だけでなく、今まで円板とともに回転運動もしているので、接線方向の速度成分も持っています。よって、(3) ......[]

追記.[3][4][5]コリオリの力と呼ばれている慣性力をネタにした問題です。コリオリの力は高校の範囲外ということになっていますが、問題文の説明通りに考えれば解答できるでしょう。
ここでは、数式を使って考えてみます。
ある座標系
Sにおいて、を受けて運動する質量mの物体P(加速度)運動方程式
 ・・・@
これを座標系Sに対して、角速度w で回転する座標系から見るとどう見えるか、ということを考えます。
座標系
Sにおける位置ベクトル,座標系における位置ベクトルになる、ということはどういうことかと言うと、右図のように、座標系Sにおいて位置ベクトルである点を角だけ回転するとになる、ということです。これを回転変換の行列(1次変換を参照)を使って書くと、
は、

は、
 ・・・A
 ・・・B
座標系Sにおける,座標系におけるの間にも、位置ベクトルと同様の関係
があるとして、A,Bと見比べると、
 ・・・C
 ・・・D
であることがわかります。ここで、@に出てくると、は、同じを別の座標系で観測した値であることに注意してください。
座標系における物体
P加速度です。C,Dを用いて、座標系運動方程式を書くと、
となりますが、この左辺を見ると、座標系Sにおいても存在していたの他に、座標系では、
2があるように見えるのです。遠心力です。というベクトルは、座標系で見たときの物体P速度と内積を作るとゼロになるので、速度に垂直なベクトルです。は、座標系で見たときに、物体Pの運動方向に垂直に働く慣性力が存在することを示していて、これをコリオリの力と言います。
本問では、
コリオリの力が、回転方向と逆向きになるように働くことがつかめれば解答できます。北半球で台風、ハリケーンが左巻きの渦を作る(南半球ではサイクロンは右巻きの渦を作る)のは、中心部に生じた上昇気流により台風中心部の気圧が下がり、ここに向かって周辺部から流れ込む空気がコリオリの力を受けて、一旦、反時計回りの方向にを受けた後に中心に向かって進んでくるからだ、と、考えられています。


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