立教大理物理'08[3]

次の文12を読み、下記の設問ADに答えよ。
1.一端を閉じた底面の半径がのガラス管を水銀で満たし、図1に示すように、上端をひもでつり下げて水銀の入った容器中に倒立させた。このとき、ガラス管の下側の底面と容器の底は離れており、ガラス管の内側上方に水銀で満たされていない空間ができた。この空間はトリチェリの真空と呼ばれ、水銀の蒸気で満たされているが、ここでは、この空間の圧力を0とみなしてよいものとする。また、ガラス管の質量と肉厚は無視できるものとし、重力加速度を,水銀の密度を,円周率を3.14とする。
ガラス管内外の水銀面の高さの差がであったとすれば、このときの大気圧が イ であることがわかる。また、ひもの張力の大きさは、ガラス管の上面に上下からかかる圧力の差から求めることができ、その値は ロ である。
2.図2(状態1)に示すように、底面積Sの断熱容器内に、体積がの単原子分子理想気体と、体積は同じの液体が密封されている。この液体の中に、片側の底面だけが閉じた円筒容器が、開いた底面を下にして置かれている。この容器の底面積は,体積はであり、肉厚、質量および熱容量は無視できるとする。円筒容器の上面の中心に取り付けられた質量が無視できるひもが、断熱容器の上面の中心から外部に引き出されている。断熱容器の上面内側には、電流を流すことによって気体を加熱、冷却できる熱電素子が取り付けられている。熱電素子の体積および熱容量は無視できるものとする。
気体と液体の間に熱の移動はなく、液体の蒸発や体積変化は無視できるものとし、重力加速度をgとする。図2(状態T)において円筒容器は液体で満たされており、気体の圧力はであった。このとき、円筒容器上面に内側から上向きに働く液体の圧力は、外側から下向きに働く気体の圧力とつりあっており、ひもの張力は0である。
熱電素子を作動しないでひもに外力を加え、図
3(状態U)のように、円筒容器の上面と外側の液面との高さの差がになるまで、円筒容器を静かに引き上げた。このとき、円筒容器は液体で満たされており、ひもの張力の大きさはであった。これは、円筒容器上面に内側から働く圧力が0であることを示しているから、液体の密度が あ であることがわかる。また、状態Tから状態Uに変化する過程で気体の体積は変化していないため、気体は仕事をしておらず、外力により円筒容器の外側の体積 @ の液体が、高さ A 持ち上げられたと考えることができる。よって、この間外力がした仕事は B であることがわかる。
次に、気体の温度が変化しないように熱電素子を作動しながらひもに外力を加え、円筒容器を静かに引き上げた。図
4(状態V)のように、円筒容器の上面と外側の液面との高さの差がになったとき、ひもの上端を固定して円筒容器の動きを止めると同時に、熱電素子を止めた。このとき、円筒容器上部には圧力が0である真空の空間ができた。状態Vにおける、円筒容器内外の底面の高さの差をとすれば、このときの気体圧力および体積は、 い および、 う と表すことができる。これらの関係式を使えばを求めることができ、 え となる。
ひもの上端を固定したまま熱電素子を作動すると、円筒容器内の液面が静かに上昇した。図
5のように円筒容器内の液面が、円筒容器の上面に達した瞬間の状態を状態Wとする。状態Vから状態Wに変化する過程で気体がした仕事は お であり、熱電素子から気体に加えられた熱量は か である。
さらに熱電素子を作動して気体を加熱した。状態Vとの温度差が、状態Wと状態Vとの温度差の
2倍になったときの状態を状態Xとする。状態Wから状態Xに変化する過程で、熱電素子から気体に加えられた熱量は き であり、状態Xにおけるひもの張力の大きさは、状態Wのときと比較して く 
A.文中の空所 イ  ロ にあてはまるもっとも近い数値を、それぞれ対応するafから1つずつ選べ。
 イ  a b c d e f
 ロ  a b c d e f
B.文中の空所 あ  き にあてはまる数式を、それぞれ対応するaeから1つずつ選べ。
 あ  a b c d e
 い  a b c d e
 う  a b c d e
 え  a b c d e
 お  a b c d e
 か  a b c d e
 き  a b c d e
C.文中の空所 i  B にあてはまる数式をそれぞれ記せ。
D.文中の空所 き にあてはまる語句を、次のacから1つ選べ。
a.小さくなった b.変化はなかった c.大きくなった

解答  お  か では、状態Wで容器内の気体の体積がに戻ることに気づかないとひどいことになります。物理の問題として難しいわけではありませんが、解答群の形をよく見て計算を進める必要があります。単位をMKSに合わせること、円筒容器の底面積がであってSではないこと、にも注意が必要です。計算結果が解答欄に出てこないときには、元に戻ってしっかりチェックしてください。
なお、問題文中の図は予断を与えないように描かれているので、惑わされないように注意してください。


1() ガラス管内の高さの部分の水銀に働く重力は、より、ガラス管の断面積として、
ガラス管の外部の水銀面の高さにおける水銀の圧力大気圧に等しく、大気圧は、,よって、c ......[] (理想気体を参照)
() ガラス管上面に下から上に向かって押し上げるはありません。ひもの張力の大きさは、力のつりあいより、ガラス管上面を上から下向きに押す大気圧によるに等しくなります。より、
よって、a ......[]

2() 円筒容器の外側の液面の高さでの液体の圧力は断熱容器内の気体の圧力に等しく、円筒容器内においてもです。円筒容器内でこの高さから上にある液体(体積)に働く重力は、液体の密度rとすると、です。
これが、この高さから下にある液体の圧力によるとの力のつり合いより、
,よって、c ......[]
(i) 右図で水色の部分にあった液体が円筒容器内の青枠の中に移ります。この体積は、
......[]
(ii) 右図水色の部分にあった液体が青枠部分まで持ち上げられた高さは、 ......[]
(iii) 従って外力がした仕事、つまり、この部分の液体の位置エネルギーの増加分は、
......[]
() 4(状態V)において、円筒容器の外側の液面の高さでの液体の圧力は断熱容器内の気体の圧力に等しく、円筒容器内においてもです。円筒容器内でこの高さから上にある液体(体積)に働く重力は、
これと、この高さから下にある液体の圧力によるとの力のつり合いより、
,よって、d ......[]
() 液体の体積変化を無視するので、断熱容器内の気体の体積減少分は、円筒容器内の真空空間の体積に等しく、,よって、d ......[]
つまり、 ・・・@ です。
() 状態U→状態Vは等温変化なので、ボイルの法則より、
 ・・・A
()の結果より、
@に代入すると、
をかけて整理すると、
について解くと、
より、
よって、b ......[]
() 状態Vから状態Wにおいて気体のした仕事は、体積の液体をだけ持ち上げた(右図の水色の部分にあった液体を円筒容器内の青枠の中に移動させる)ときの位置エネルギーの増加分に等しく、

よって、a ......[]
() 状態Vから状態Wにおける内部エネルギーの増加分をとして、熱力学第1法則より、熱電素子から気体に加えられた熱量は、
 ・・・B
となるので、を求める必要があります。は、状態V,状態Wにおける絶対温度,気体定数をRとして、
 ・・・C
で与えられます。状態U,状態Tにおける絶対温度であって、を考えるために、状態T,状態Wにおける状態方程式を考えます。断熱容器内の気体のモル数をn,状態Wにおける気体の圧力とします。
状態Tにおける状態方程式 ・・・D
状態V→状態Wにおいても液体の
体積変化を無視すると、円筒容器内の真空部分がなくなるので、断熱容器内の気体の体積に戻ります。
状態Wにおける状態方程式 ・・・E
5(状態W)において、円筒容器の外側の液面の高さでの液体の圧力は断熱容器内の気体の圧力に等しく、円筒容器内においてもです。円筒容器内でこの高さから上にある液体(体積)に働く重力は、
これと、この高さから下にある液体の圧力によるとの力のつり合いより、

E−Dより、
Cに代入して、
 ・・・F
これと()の結果をBに代入して、
パっと見て解答欄に見あたらないのですが、第2項の1に分けると、第1項とでをまとめることができて、
よって、e ......[]
() 状態Vと状態Xとの温度差が、状態Vと状態Wとの温度差2倍になった、ということは、状態Wから状態Xまでの内部エネルギーの増加分は、状態Vから状態Wまでの内部エネルギーの増加分に等しいということです。Fより、
よって、b ......[]
() 状態W(円筒容器内の液面が円筒容器上面に到達した瞬間)において、張力Fと円筒容器上面に気体が及ぼすとの力のつり合いより、

このとき、円筒容器上面を円筒容器内の液体が押し上げる0です。また、は、円筒容器外の液面よりも上の部分にある円筒容器内の液体に働く重力とつりあっています。
この状態から、ひもの上端を固定し、断熱容器内の気体を加熱して
圧力だけ大きくすると、重力は変化しないので、円筒容器内の液体を上に押し上げようとするとなり、だけ大きくなります。従って、液体が円筒容器上面を上に押し上げようとするが出てきます。
一方、円筒容器上面を下に押す気体の
圧力によるとなり、張力との力のつり合いは、

つまり、状態Wにおけるひもの張力は、状態Vのときと変化しません。よって、b ......[]


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