早稲田大学基幹・創造・先進理工学部2010年数学入試問題


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[1] xy平面上の2ABを通り、直線と共有点をもつ円を考える。以下の問いに答えよ。
(1) この円の中心Pの軌跡を求めよ。
(2) この円の半径rの最小値を求めよ。
[解答へ]


[2] xy平面上の点に対して、点,・・・ を次の式で順に定める。
以下の問いに答えよ。
(1) のとき、を求めよ。
(2) のとき、を求めよ。
(3) かつ のとき、となることを示せ。
(4) となる2以上の整数nが存在しないとき、点はどのような範囲にあるかを図示せよ。
[解答へ]


[3] abを実数とし、xy平面上の次の2つの関数のグラフについて考える。
 ・・・@
 ・・・A
以下の問いに答えよ。
(1) @,Aがただ1つの共有点をもつとき、baで表し、そのグラフをab平面上に図示せよ。
(2) (1)のグラフをと表す。定数pに対して
を最大にするaおよびその最大値を求めよ。
[解答へ]


[4] xyz空間において、2PQを考える。線分PQx軸の周りに1回転して得られる曲面をSとする。以下の問いに答えよ。
(1) 曲面Sと、2つの平面およびで囲まれる立体の体積を求めよ。
(2) (1)の立体の平面による切り口を、平面上において図示せよ。
(3) 定積分の値をと置換することによって求めよ。これを用いて、(2)の切り口の面積を求めよ。
[解答へ]


[5] 表の出る確率がp (),裏の出る確率がの硬貨が1枚ある。nを自然数とする。この硬貨を回投げたとき、表が回以上出る確率をとする。以下の問いに答えよ。
(1) を求めよ。
(2) となるpの範囲を求めよ。
(3) となるabnを用いて表せ。ただしabpを含まないとする。
(4) のとき、を最大にするnを求めよ。
[解答へ]




各問検討

[1](解答はこちら) この問題のポイントは、119という数値にあると言ってもよいでしょう。
または
という範囲が出てきたときに、受験生は、ホントかな、と思ってしまいがちです。基礎事項への理解度があやふやだと、何となく気分的に変だからは不適だ、などとやってしまいかねません。あやふやな理由で答案を書くのでは、数学では得点になりません。円と直線の位置関係について、図を描いて出てきた結果があり得る、ということを確信できるだけの理解度が問われている、とも、言えます。
本問では、円と直線の位置関係を、円の方程式と直線の方程式の連立からでなく、円の中心と直線との距離から考える、といった基本技巧の知識も必要です。
教科書レベルの基礎事項からしっかりマスターしておくべきだ、ということを本問は教えてくれています。




[2](解答はこちら) 問題文で新概念を定義して、受験生が未経験のものにも柔軟に対処できるか、という能力を見ようという問題です。早大理工では、しばしば見られるタイプの問題です。
本問はかなり面倒ですが、難問というわけではありません。見慣れないからという理由で拒否反応を示すのではなく、寛容な気持ちを持ち問題文の意図を読み取って忍耐強く対処すれば、得点源とすべき問題と言えます。
1次変換の問題のようにも見えますが、行列の計算としては大したことはなく、むしろ、論理的に完璧な答案を書けるかどうかが問われている問題です。
いきなり
(4)が来ると戸惑うだろうと思いますが、親切な誘導がついていて、受験生が自分でカラクリを発見できるようになっているので、素直に取り組んでいけば解答可能なはずです。
入試問題の背景などを説明すると、自分には関係ない、という態度をとる受験生がいるのですが、ことしの早大理工は、定型パターンの問題だけをひたすら反復練習する、という狭い視野の勉強をしてきた受験生には厳しいことになったでしょう。未知のことがらに対して幅広い関心をもつことが大切だ、ということを本問は教えてくれています。
解答では、からを求めることを、のように表記して解答しました。いろいろな書き方が可能ですが、一々行列を使って答案を書くのでは面倒なので、試験場においても、何らかの省力化を工夫して書きたいところです。この辺の巧拙が合格できるかどうかにも響いてしまうので、日常的なことから細かい工夫をすることを心がけるようにしてください。




[3](解答はこちら) 数学Vの微分の問題なのですが、状況設定が意外に複雑で、丁寧に調べて行こうとすると手間がかかる問題です。こうした問題では、面倒だからと言って、答案の記述で手抜きをしてしまうと、大幅減点になってしまいます。上手に説明しようと見栄を張る必要はありませんが、説明の飛躍がないように、ステップバイステップで念入りに答案を書くように心がけましょう。
ただし、
(1)は、のグラフがy軸対称であることを利用し省力化することは可能です。省力化すること自体に難航するくらいであれば、解答のように素直に答案を書いても、充分に試験時間内に収まると思います。
(2)は、の連立方程式とみて、(1)のグラフを利用し、このグラフと直線が共有点をもつようなkの最大値を考える、という線形計画法的な解法も可能です。より効率的な解法を工夫してみてください。ここも、解答では素直にaの範囲とpの値で場合分けして考えていますが、策のないように見えても試験時間内で充分に解答可能で、安全な解決法です。より工夫して効率的な解答を目指すか、手間をかけて安全な解答で妥協するか、試験会場では、利害得失をよく考えて対処するようにしましょう。



[4](解答はこちら) 空間図形の要素もありますが、主体は、という数学Vの積分計算の部分にあります。計算はかなりややこしいですが、何とか正解しておきたい問題です。
空間図形の部分については、
慶大理工07[A4]などにも見えるタイプのもので、知識がないと手がつかないかも知れません。ですが、しっかりと準備しておけば定型的な処理で解決できます。数多くの入試問題の中では必ず出題されるタイプの問題なので、本問で理解をしておくようにしましょう。切り口を図示する部分がやや難航するかも知れません。東工大98年後期[2]に比べれば大したことはありませんが、解答の中で、x座標kを使って不等式を作っておき、後で、kxに書き換える、という要領を習得してください。
という積分は、解答に書いたように、

として部分積分することが多いと思いますが、本問のように、
(は双曲線関数です)
とおいて置換積分することもあります。これは、とおいて置換積分することに似ています。オイラーの公式:を思い浮かべれば自然な流れです。
なお、この積分には、他に、とおいて置換積分する技巧が知られています。今年、このことに関連した問題が
東大理系前期[4]で出題されました。東大理系前期[4]検討に書きましたので、参考にしてください。



[5](解答はこちら) 何人の受験生が完答できたのだろうかと思ってしまう難問です。本問のヤマは(3)にあり、(1)(2)(3)への誘導になっています。
結局、本問の仕掛けの中核部分は、解答途中の,つまり、表が回以上出る確率が、で打ち消し合うところにあるのですが、
(1)(2)の誘導だけでは、とても、このことに気づけないと思います。
参考書・問題集の解答を読んでいて思うのですが、どの本も、問題文のあとに「解答のポイント」とかが書いてあって、そこから一足飛びに解答まで一直線に進んでいくように書かれています。
紙面の都合などがあって、余計なことを書く余裕はないのだろうと思いますが、私は、これで、受験生の補助教材と呼べるのだろうか、と、思ってしまいます。
受験生が、こうした参考書を読んでどう感じるのでしょうか?
数学の問題は、問題文を見るなり、解答の方針を思い浮かべて道草をすることなく一本道で解かねばならないもの、と、思い込むではないかという気がするのです。問題文を見て解答の方針が思い浮かばないのは劣等生で、一気に解答が書けないのは努力不足なのだろうと、自己嫌悪に陥ってしまわないか、と、私は危惧してしまいます。
塾・予備校の授業でも、本問のような難問を、頭脳明晰な有名講師が鮮やかに解いて回るのを見て、受験生が、すごいなあ、と、驚嘆するのであれば、私は、実はほとんど教育効果は存在しないのではないか、と、考えています。
標準的な受験生が努力をして難関大学に挑戦するときに大切なことは、いろいろと試行錯誤し、苦悩し、工夫して、最終解答にたどりつくことだと私は思います。解答が書ければ、もちろん嬉しいですが、数学・物理の楽しさが最も大きいところは、解答が書けたところにあるのではなく、問題の本質がつかめずに紆余曲折しながらあれこれと思い悩むところにこそあるのではないか、と、私は思うのです。
であれば、参考書や問題集は、誤答例や失敗例などを中心に書くべきではないか、と、私は思うのです。読者には、その情報の多くは無意味なものであるかも知れませんが、少なくとも、入試問題の模範解答と言っても、さまざまな失敗の積み重ねの上に成り立っている、ということが受験生に見えるのではないかと思うのです。
また、塾・予備校でも、予習なしでやってきて授業中に行き詰まり立ち往生してしまう講師が、最も、受験生にとって教育効果の高い講師だ、と、私は思うのです。その講師が汗をかきながら苦し紛れにやっていることこそ、受験生がまさに試験会場でなすべきことだからです。ですが、残念ながら、日本では、塾・予備校経営者が、こうした善良な講師に、できそこないのレッテルを貼ってしまうのが現実ではないかと思います。
今、新しい情報端末が脚光を浴びていて、電子書籍元年などと言われていますが、今から
20年以上も前に電子書籍の開発に取り組んだことのある私としては、電子書籍ごときの普及に随分と時間がかかるもんだ、と、複雑な気持ちにさせられるとともに、真に、明日の日本の科学を担う世代の育成に役立つような電子書籍版参考書を、既存の紙ベースの出版社が企画してくれないか、と、期待してしまいます。電子書籍であれば、紙面の都合などという制約はなくなります。読者が不要と考えれば、失敗例の記述をパスして読めばよいのです。
本ウェブサイトの解答は、本問に限らず、ご覧の皆さんは、何でこんな回り道をするのか、と、感じると思います。一つには、実際に試験場でどういう道筋で解答にたどり着くのか、そのライブ感を伝えたい、という想いがあります。普通の受験生が本問の
(3)を一本道で解答するのは無理というものです。もちろん、受験生一人一人で、どういうアプローチを取るか、個性もあると思うので、ご覧になっている皆さんは、もっと別のアプローチを取るかも知れません。本ウェブサイトでは、こうやれば、制限時間内に充分に問題を解いていくことができる、という一つの例を示しているに過ぎません。何を悪戦苦闘しているのか、苦労して解いているんだな、と、感じて頂ければ幸いです。
本問では、もう一点、
(3)の結果の美しさにも感動させられます。入試問題として適切な問題か、という点ではやや疑問符がつきますが、受験生に、より高く跳躍しようという意欲を起こさせる、良問だと私は思います。どうやって、思いついた問題なのかわかりませんが、出題者の先生には敬意の気持ちを表したいと思います。



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