東京大学理系2008年前期数学入試問題

[1]
 座標平面の点へ移す移動fを考え、点Pの移る行き先をと表す。fを用いて直線,・・・ を以下のように定める。
は直線である。
・点P上を動くとき、が描く直線をとする()
以下1次式用いてと表す。
(1) で表せ。
(2) 不等式が定める領域をとする。,・・・ すべてに含まれるような点の範囲を図示せよ。
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[2] 白黒2種類のカードがたくさんある。そのうちk枚のカードを手もとにもっているとき、次の操作(A)を考える。
(A) 手持ちのk枚の中から1枚を、等確率で選び出し、それを違う色のカードにとりかえる。
以下の問(1)(2)に答えよ。
(1) 最初に白2枚、黒2枚、合計4枚のカードをもっているとき、操作(A)n回繰り返した後に初めて、4枚とも同じ色のカードになる確率を求めよ。
(2) 最初に白3枚、黒3枚、合計6枚のカードをもっているとき、操作(A)n回繰り返した後に初めて、6枚とも同じ色のカードになる確率を求めよ。
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[3](1) 正八面体のひとつの面を下にして水平な台の上に置く。この八面体を真上から見た図(平面図)を描け。
(2) 正八面体の互いに平行な2つの面をとり、それぞれの面の重心をとする。を通る直線を軸としてこの八面体を1回転させてできる立体の体積を求めよ。ただし、八面体は内部を含むものとし、各辺の長さは1とする。
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[4] 放物線上に2PQがある。線PQの中点のy座標をhとする。
(1) 線分PQの長さLと傾きmで、hを表せ。
(2) Lを固定したとき、hがとりうる値の最小値を求めよ。
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[5] 自然数nに対し、で表す。たとえばである。
(1) m0以上の整数とする。で割り切れるが、では割り切れないことを示せ。
(2) n27で割り切れることが、27で割り切れるための必要十分条件であることを示せ。
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[6] 座標平面において、媒介変数tを用いて
     
()
と表される曲線が囲む領域の面積を求めよ。
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各問検討

[1](解答はこちら) 数学オリンピック・メダリストという方ならともかく、普通の受験生は、第1問ということもあり、問題文を読むと驚かされると思います。この問題をものにできるかどうかの分かれ目は、無限角形が答になるはずがない、という漠然とした期待感と、点が、すべての直線上の点になっていることに気づくことにあると思います。
そのためには、まず最初に、直線と直線の交点を求めて、この交点が移動
fでどこに行くのかを調べるべきでしょう。
私は、もしかして無限角形になる?、か、数列が循環するような数列になることを期待しましたが、の交点が、移動
fの不動点になることがわかって、ガッカリしてしまいました。試験場では喜ぶべきかも知れませんけれど。
が不動点になることに気づいてしまえば、あとは、
3項間漸化式の標準的な解法の知識と論述力が問われるだけです。
のときに、直線は直線に近づきますが、「すべての,・・・,,・・・
に含まれるような点」というときに、直線上のの部分の点を入れるのか、除外するのか、迷いましたが、ここでは、世の大勢に従いました。
もし、領域が
()となっていて、 (s:無理数)とか、 (pqは互いに素な自然数)となっているようなときはどうなるのでしょうか?
であれば、角形の周上または内部、
(s:無理数)のときは、円周から内側、ということになるのでしょうか?


[2](解答はこちら) 東大は他の国公立大学に比べると、やや確率は易しい気がします。この問題も、一見、漸化式を立てるようでいて、立てなくてもできてしまいます。
ただ、その分、勘違いなどでケアレスをし易いので、充分に注意して解答する必要があります。問題としては易しくても、正解するのは難しいのです。この問題でも、樹形図を書いて、くらいの場合について、実際に確率を求めて確かめるような心がけをして頂かないと、泣かなくてはいけないことになりかねません。

(1)は付録の問題で、(2)で見通しをつけさせるためのヒントになっています。
(1)の時点で、同じことが2回の操作ごとに繰り返されること、白黒を入れ替えても変わりがないことに気づかないといけません。
将来、社会の第一線で活躍するようになり、新しい技術を開発するときに、旧来の技術を応用したり、同じような発想で取り組むということはよくあることです。また、事務作業の効率化を図るときにも、類似の作業をコンピュータ化することによって省力化する、ということもよくあることです。この問題は、そうした技術開発や効率化の手法を教えてくれている問題で、難関大学では頻出パターンです。

確率の問題では、状況が文章で書かれています。最初にすべきことは図示することです。どのような状態が起こりうるのか、状態間はどのような確率でどのように移り変わって行くのか、図を描いて見やすくします。
この問題、あるいは、漸化式を立てるような問題では、同じことが繰り返されているところがあるので、そこに着目します。

(1)(2)の違いは、考えるべき状態の数が(2)で少し多くなっていることと、(2)では繰り返しになる前に、1回目の@→Aが付いていること、です。
これがつかめれば、この問題は、ほとんど計算する部分もなく、落とせない問題です。

2回繰り返した後の確率、3回繰り返した後の確率、4回繰り返した後の確率、くらいは、しっかりチェックするように普段からクセをつけておくとよいと思います。
また、とした場合には、最終解答に
mを残さないように、を代入しておくのを忘れないように注意してください。


[3](解答はこちら) 問題文を読んだだけでは大変そうに見えるのですが、東工大'98後期[2](斜めになった円筒を回転)などに比べれば大したことはないと私は思います。(1)(2)の強力なヒントになっていて、回転軸から最も遠い点と回転軸との距離が断面の円の半径になるので、回転軸から最も遠い点が(1)の平面図のどこに来るか、というだけのことです。きちんと論述すると大変ですが、回転体の体積を求めるだけであれば、東工大'98後期[2]のような場合分けの必要もなく、東大の空間図形の問題としては、むしろ易しい部類です。大した問題でもないのに、難問だ、難問だ、と、思い込むと、本当に難問になってしまいます。
試験会場でこの問題を難問だと思い込んでしまった受験生は、正八面体はどういう立体なのか記憶になかったのではないでしょうか?参考書の受験技巧の中には、正八面体の性質とか、その鳥瞰図の描き方、など、あまり載っていないと思いますが、東大受験生は、受験技巧を極めよう、というのではなく、日常身の回りに起こる森羅万象について関心を持っていて欲しいと思います。地球温暖化や少子高齢化問題など自分には関係ない、と思う受験生は東大を目指してはいけません。ここでも、正八面体の鳥瞰図の書き方が東大対策の受験技巧などとは、間違っても思わないでください。


(1)は、手前に見える正三角形をまず描いて、対称性から考えていけば、すぐにわかることです。なぜそう見えるのか、ということを、きちんと論述すると大変ですが、試験会場では、まずは、図だけしっかり書いておいて、時間の余裕があればあとで説明をつける、くらいで良いと思います。図を書くだけなら数分ですむでしょう。

(2)は、いろいろな解法が考えられますが、出題者が想定したのは、(1)の平面図を使って、余弦定理で断面の円の半径を求める、という考え方だろうと思います。ここでは、そのように素直に解答しました。(2)もきちんと論述するのは大変ですが、試験会場では、まずは体積を求めることを目標に、回転軸上に点P,辺AC上に点Qを、となるようにとり、としてAQを求め、PQ (断面の円の半径)を求める余弦定理の式と定積分の式だけ書いておいて、時間の余裕があればあとで説明をつける、という方針で行きましょう。これだけでは大幅減点必至ですが、答が合っていれば充分に合格ラインです。
解答では、辺
ACが回転軸に対して傾いているので、辺AC上の長さが実距離にならず、説明がわかりにくいかと思いますが、(1)の平面図上で見ている、ということに注意してください。わかりにくい空間図形の位置関係を平面図上に置き直して見ると、意外に簡単に考えることができるものです。


[4](解答はこちら) 東大の数学の入試問題はよく練られた斬新なアイデアの問題が多いのですが、かと言って受験技巧が不要というわけではなく、受験技巧を振り回せば解答でき問題も毎年出題されています。過去3年で見ても、'05年前期[3]'06年前期[3]'07年前期[2]'07年前期[4]などが挙げられます(多分、来年の入試でも、同じコメントを書くでしょう)。それなりにレベルを高くしてあったり、計算をややこしくしてあったりすることが多いのですが、ここで点数を稼いでおかないと、ほかに解ける問題がない、という年もあります。開始の合図で、[1]から順番に解くのではなく、受験技巧で片付く問題を探して、そこから始めるべきです。'08年は、[1][3]が大したことないので、最初から順番にやっていっても良いですが、受験技巧に自信のある受験生は、解と係数の関係、対称式、微分計算で片付くこの問題から手がけて、確実に点数を上積みするべきです。
但し、受験技巧と言っても、重箱のすみをつつくようなマイナーな技巧は東大では見かけません。教科書に出てくるもの、学校の授業で扱われるもの、その程度をしっかりやっておけば充分です。


(1)は、放物線と直線の関係する問題で、解と係数の関係を用いる技巧は頻出パターンなので、これに気づけない受験生は勉強不足と言われても仕方ありません。の対称式になるので、を用いて表すように式変形するのも常套手段です。
(2)の最小値は、式の形が相加平均・相乗平均の関係を使えるような形をしているのですが、の場合にはうまくいきません。こういうときには素直に微分して増減を考えればよいのです。微分計算も複雑な技巧を使うほどのものではありません。


[5](解答はこちら) レベルもほどほどで東大らしいよく練られた香り高い問題です。こういう問題を解答してこそ東大生の真骨頂と言うべきですが、試験会場では(1)だけにして、[1][4]に全力を挙げる方が利口かも知れません。
解答では、シラミつぶしで調べました。市販本の解答はもっとスマートな解答だと思います。しかし、試験会場ではこの解答程度が限界ではないでしょうか?勇気を起こして構想をまとめきるのに、どれだけの時間がかかるか、他の問題で点を稼ぐこととのトレード・オフをしっかり見極めないと、考えていて楽しくなる問題だけに、この問題で時間を使い過ぎて、他の問題を解く時間がなくなることが心配です。

市販本の解答では、自然数
n10進法で表したときに各位の数字の和が3の倍数ならn3の倍数であり、各位の数字の和が9の倍数ならn9の倍数である、という事実を使ってもっと簡単に示しているようです。
(1)では、(**)部分は、2つの異なる自然数mnに対して、は、各位の数字の和が3だから、3で割り切れるが9では割り切れない、と、すぐに言えます。
(2)では、“27で割り切れる n27で割り切れる”の証明は、
の各位の数字の和が
nなので、27で割りきれるなら9の倍数だから各位の数字の和n9の倍数で、mを自然数としてとおくと、

(1)より、9の倍数だが27の倍数でないので、27で割りきれるなら中カッコ内は3の倍数でなければならず、中カッコ内の数値の各位の数字(1'がm個ある)の和m3の倍数。従って、27の倍数、と、容易に言うことができます。
こういうスマートな解答が、試験会場で短時間に思いつけたらそれで解答すればよいと思いますが、思いつけないときの安全策としては、
20分、30分と簡便解法を考えるくらいなら時間はかかりますが、解答のようにシラミつぶしで全数チェックしていくのがよいと私は思います。全数チェックしていくうちに、簡単な解法がヒラめくということもあります。


[6](解答はこちら) 私は、この問題は悪問だと思います。高校の先生方の中には、高校数学の基本ができているかを見る良問だとおっしゃる先生もいらっしゃると思いますが。
私が、この問題を悪問だと思う理由は、試験開始後に全問を見渡して、この問題を最初に手がけた受験生の涙が見えるからです。東大の先生がどういう採点を行ったかわかりませんが、微分してきちんと増減表を書いて、グラフをきれいに描いている解答にプラス点を与えているのでしょうか?正解に到達するためには不要となる事実であっても、正しい事実が書かれているのであればプラス点をつけるという採点をやってくれているのであれば良問かも知れませんが、悪戦苦闘してグラフを描いたのにもかかわらず定積分計算をミスして零点にされてしまった上にペースを崩して他の問題に集中することができず、実力を発揮することなく敗れ去ってしまった受験生が多々いるような気がします。

過去問を見ても、東大数学は、
'08年前期[5]のような良質の問題、'08年前期[4]のような受験技巧で対応できる問題のほかに、'08年前期[3]のような見た目大変そうでも実際には大したことがない問題、この問題のように見た目取っつき易そうでも不覚をとる原因になり易い問題も出題しています。
すぐに思い浮かぶのは、東大文系
'91年前期[1]
の、区間での最大値と最小値を求めよ。
という問題です。ご覧の皆さんも、こんな易問でどうして不覚をとるのか、と、お思いなら、ぜひ取り組んでみてください(だから、というのはダメです)。試験会場でこの問題にはまりこんでしまえば合格の2文字は非情にフェードアウトします。
もちろん、本当に実力のある受験生であれば難なくクリアできるのですが、学校の練習問題の感覚で取り組むと泣くことになるのです。この問題が、意地悪な教授によって実に精密に練り上げられた、東大ならではの難問だということは見た目では判断がつきません。
ほかにも、理系
'94年前期[1]

とする。このとき、以下のことが成り立つことを示せ。
(1) 任意の実数xに対し、である。
(2) 方程式はただひとつの実数解aをもち、となる。
理系‘96年前期[2]
abcdを正の数とする。不等式 を同時にみたす正の数stがあるとき、2次方程式の範囲に異なる2つの実数解をもつことを示せ。
など、勉強家の受験生が注意しなければいけない問題があります。よく勉強してきた受験生ほど、'94年前期[1]ではのマクローリン展開が、'96年前期[2]ではハミルトン・ケーリーの定理が頭に浮かんでしまうのです。'94年前期[1]では、あっと驚くスーパー解法で解いたという受験体験記が雑誌「大学への数学」に紹介されていましたが、平凡に微分していけば解決します。'96年前期[2]は、平凡に、判別式、軸の位置、端での2次関数の値を調べれば解決します。こういう問題を見ていると、東大の教授がアンチ受験勉強という発想をしていることを感じるのです。なまじ重箱の隅をつつくような受験技巧は知らない方が素直に解けて良い、ということもあるので、東大受験生は、勉強をし過ぎないように充分に注意してください。それよりも、あなたの才能を社会の困難な問題点の方に向けて欲しい、というのが私の願いです。

逆に、理系
'98年前期[4]
実数xに対してをみたす整数kで表す。nを正の整数として、
とおく。個の整数,・・・,のうち相異なるものの個数をnを用いて表せ。
のように、見た目仰々しく、受験生が怖じ気づいてしまうような問題が、実は、高級な技巧を持ち出さずとも、3次関数のグラフと接線の傾きを調べていけばできてしまう見かけ倒しの問題だったりします。

さて、本問:
'08年前期[6]に戻ります。
この問題のポイントは
2つあって、どういうグラフをしているのか、ということと、定積分の計算方法の2点です。
東大受験生に限らずとも、面積を求める問題で、普通の受験生が、一々、微分してグラフを書くでしょうか?私は、この問題では、解答に書いたような詳細な検討をしなくても、値を適当に代入してプロットしグラフを答案用紙に描いておけば充分だと思います。たとえ、減点されたとしても、減点幅は大したことはなかっただろうと思います。面積を求めることが問題の要求だからです。
この問題の定積分の計算はかなり面倒なので、焦らずに効率的に計算する方法を考えるべきです。市販本にいろいろな考え方が紹介されています。どういう方法でも良いので、計算の効率化を考えるべきです。


[1][5]を先に解いて、あと数十分という段階でこの問題を解き始めた受験生は、恐らく、上のような発想をして取り組んだだろうと思います。微分する時間的余裕も精神的余裕もないでしょう。計算ミスさえしなければ、数十分で充分に正解にたどり着ける問題です。試験会場で、どういうストラテジーを建てたかで運不運が分かれてしまう、という問題が、受験生の実力を評価するのに適切な問題だとは、私には思えません。

しっかりと受験準備をしてきた実力のある受験生が泣くことにならないように、この問題で、東大受験の注意点をしっかりと頭に叩き込んでおいてください。



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