東京大学理系2007年前期数学入試問題

[1]
 nkを正の整数とし、を次数がn以上の整式とする。整式n次以下の項の係数がすべて整数ならば、n次以下の項の係数は、すべて整数であることを示せ。ただし、定数項については、項それ自身を係数とみなす。
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[2] n2以上の整数とする。平面上に個の点O,・・・,があり、次の2つの条件をみたしている。
@  () ()
A 線分の長さは1,線分の長さはである。
線分の長さをとし、とおくとき、を求めよ。
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[3] 座標平面上の2PQが、曲線 ()上を自由に動くとき、線分PQ12に内分する点Rが動く範囲をDとする。ただし、のときはとする。
(1) aをみたす実数とするとき、点Dに属するためのbの条件をaを用いて表せ。
(2) Dを図示せよ。
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[4] 以下の問いに答えよ。
(1) 実数aに対し、2次の正方行列APQが、5つの条件をみたすとする。ただしである。このとき、が成り立つことを示せ。
(2) aは正の数として、行列を考える。このAに対し、(1)5つの条件をすべてみたす行列PQを求めよ。
(3) n2以上の整数とし、をみたす整数kに対してとおく。行列の積を求めよ。
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[5] 表が出る確率がp,裏が出る確率がであるような硬貨がある。ただし、とする。この硬貨を投げて、次のルール()の下で、ブロック積みゲームを行う。
  
() 
nを正の整数、mをみたす整数とする。
(1) n回硬貨を投げたとき、最後にブロックの高さがmとなる確率を求めよ。
(2) (1)で、最後にブロックの高さがm以下となる確率を求めよ。
(3) ルール()の下で、n回の硬貨投げを独立に2度行い、それぞれ最後のブロックの高さを考える。2度のうち、高い方のブロックの高さがmである確率を求めよ。ただし、最後のブロックの高さが等しいときはその値を考えるものとする。
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[6] 以下の問いに答えよ。
(1) をみたす実数xaに対し、次を示せ。
(2) (1)を利用して、次を示せ。
ただし、2の自然対数を表す。
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各問検討

[1](解答はこちら) 最初はnに関する帰納法だろうと思うのが普通だと思いますが、やってみるとやりにくいことがわかります。やりにくい原因は、の場合との場合で、の係数に違いができてしまうところにあります。このまま、強行してもできなくはありませんが、方向転換して、数学的帰納法のやり方を考え直し、kについての帰納法にすると、の場合がうまく使えて簡単にすみます。
最初の方針で強行するか、方向転換して別の解法を考えるか、試験会場でも迷う局面が多いと思います。日頃から自分の頭を使って問題を考え、どこまで強行し、どういうフィーリングになったときに方向転換するか、感触をつかんでおくことが大切です。たまには、
1題の問題にまる1日かけて考えてみる、というようなことも、方向転換の判断基準を磨く上で大切なことです。


[2](解答はこちら) 東大でも、毎年1題は、理系の受験生であれば誰でも知っている基本的技巧を使って解くことができる問題が出題されます。この問題を落とさないようにすることが、合格の最低条件です。ただし、計算ミスや勘違いには充分注意しなければいけません。
この問題では、相似比に気づけば、等比数列の和の公式、を利用するだけです。考え込むようなところもなく、答案をいかにスピーディーに書けるか、ということが問われる、という感じです。



[3](解答はこちら) この問題は、'07年前期[1]'07年前期[2]とは違い、見た目何でもないようでやってみると息が長く骨の折れる問題です。試験会場では、途中までやってみて大変そうだ、ということになったときには、後に回すべきだと思います。
出題者の方に直接聞くわけにも行きませんが、放物線上の
2点を結ぶ線分の中点の存在領域、というくらいでないと、試験にならないのではないかと思います。「中点の存在領域」では素直すぎて「東大の」入試問題としての存在意義に欠けるということかも知れませんが、この問題を完答している受験生が、他の問題を落として合格できていない、ということがあったりするのではないか、という気がします。

東大は、「
2次方程式の解の配置」の問題をよく出します。2次方程式の2解がともにある範囲内、という場合、判別式≧0,放物線の軸が解の存在範囲内、解の存在範囲の端の2次関数の値≧0,として解答できる定型問題と言ってもよいでしょう。ですが、東大の場合、定型問題のように見せないで、問題文の条件を考えさせるうちに、2次方程式の解の配置に帰着させる、というストーリーになっています。この問題もまた、そうした問題です。
この問題の大変なところは、放物線上の
2PQについて、PQ12に内分する点を問題にしていて、対称になっていない、というところです。高尚な技巧を使わなくても解いていけますが、2つの2次方程式の解の持ち方が非常に複雑なので、制限時間内に解ききれるだろうか、混乱して条件を錯覚するようなことなくゴールにたどりつけるだろうか、という不安感との闘いになります。

他にも解法が考えられるようですが、どの解法にしても簡便に解決がつくわけではありません。試験会場では、
[1][2][4][5]を完答して見直しも済ませ、[6]の後半と[3]しか残っていない、という状況で、時間の制約なしにじっくり取り組む、という方針が最良の結果を生むように思います。


[4](解答はこちら) この問題はスペクトル分解の知識があれば容易です。通常は行列のべき乗の問題として登場しますが、ここでは個の行列の積を問う問題になっています。本質的には、べき乗を求めるのと変わりません。
ここで注意しておきたいのは、「だからスペクトル分解は東大必須の受験技巧」というわけではない、ということです。以前にも、加法定理の証明が出題されたことがありますが、だから東大受験のためには加法定理の証明を暗記していなくてはいけない、ということではありません。
東大の場合、
3項間漸化式や空間図形などを除くと、あまり同一のテーマを繰り返し出題することはありません。再び「スペクトル分解」がテーマとして取り上げられるのは30年後くらい、「加法定理の証明」が出題されるのは300年後くらいになってしまうかも知れないのです。3項間漸化式が頻出と言っても、3項間漸化式の解法を記憶しているかどうか、ということではなく、もっと別な視点から考える問題の中で取り上げられている、という程度のことです。
従って、東大受験生は、「スペクトル分解」や「加法定理の証明」と同様の困難さのレベルの事実であって、もっと他の事実に目を向けていなければいけない、ということに注意してください。それは、数学の教科書や参考書、あるいは、専門書に載っているようなことではなく、新しい科学の発見であったり、日本経済であったり、世界情勢であったりするかも知れません。受験科目以外であっても、困難な問題があったら自分の頭で考えてみる、という積極的なチャレンジ精神が東大の必須技巧なのです。



[5](解答はこちら) 何の変哲もない易しい問題なのですが、試験会場ではどうだったでしょうか?易しいと思う気持ちが気のゆるみにつながっての場合分けを忘れてしまい、涙を飲んだ受験生も多いのではないかと想像されます。東大の確率の問題で易しいと感じる問題には、この問題のような落とし穴が用意されているので、よく注意してください。


[6](解答はこちら) この問題の(2)が、ことしの問題の中では最難関であるように、私は感じました。最初からとおくことに気づくか、旺文社全国大学入試問題正解に出ていますが、(1)を利用するときに、 という定積分の形で利用し、 の積分範囲を2つに分けることにより(1)を使う、というのでもない限りは、としてうまく行かない、という時点で、深入りしない方が無難だと思います。
とおくとうまく行かないが、とおくとうまく行く、というのは、関数が、の周辺よりもの周辺の方が変化率が大きく、
となるabを探すよりも、 となるabを探す方がやり易い、というところから来ています。しかし、試験場で自然に思いつけるようなことなのでしょうか?
数値の近似に関する問題は、
'99年前期[6]にも、 を示せ、という問題が出ていました(この問題は、やって行くと、を示すことになります)が、本問の方が難解だと思います。
曲線を接線で近似すればできる、程度の工夫で解決するならともかく、この問題のように、平均的な受験生が素直に取り組むと煮ても焼いても食えないようなことになる問題は、果たして入試問題として適切か、という気がします。こうした問題は、試験会場でさっさと見限る眼力を受験勉強において養うべきだ、などと言っては、あまりに皮肉かも知れません。



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