東京工業大学2011年前期数学入試問題

[1]
 nを自然数とする。xy平面上で行列の表す1次変換(移動ともいう)とする。次の問いに答えよ。
(1) 原点Oを通る直線で、その直線上のすべての点がにより同じ直線上に移されるものが2本あることを示し、この2直線の方程式を求めよ。
(2) (1)で得られた2直線と曲線によって囲まれる図形の面積を求めよ。
(3) を求めよ。
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[2] 実数xに対して
とおく。
(1) 関数の最小値を求めよ。
(2) 定積分を求めよ。
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[3] 定数kをみたすとする。xy平面上の点Aを通りx軸に垂直な直線の第1象限に含まれる部分を、2XYをみたしながら動いている。原点Oを中心とする半径1の円と線分OXOYが交わる点をそれぞれPQとするとき、△OPQの面積の最大値をkを用いて表せ。
[解答へ]


[4] 平面上に一辺の長さが1の正方形DおよびDと交わる直線があるとする。この直線を軸にDを回転して得られる回転体について以下の問いに答えよ。
(1) Dと同じ平面上の直線Dのどの辺にも平行でないものとする。軸とする直線はと平行なものの中で考えるとき、回転体の体積を最大にする直線はDと唯1点で交わることを示せ。
(2) Dと交わる直線を軸としてできるすべての回転体の体積の中で最大となる値を求めよ。
[解答へ]




各問検討

[1](解答はこちら) 昨年同様、本年も東工大前期は、[4]以外は標準的で、[1][2][3]で確実に得点しておく必要があります。
[1]は、(1)が不動直線、(2)が定積分公式、(3)が数列の和の技巧を扱う基本問題です。
90年代に大流行した不動直線の問題は、高校カリキュラムの改訂によって一時出題されなくなりましたが、「ゆとり教育」見直しによって出題範囲が広がりつつある中で再度出題されるようになってきました。本問では基本的なことが問われているだけですが、'09年前期[2]にも本格的な問題が出題されています。
また本問
(2)で使われている公式を使う問題が、'94年前期[1]にも出題されています。同様の公式を使う問題も''03年前期[1]に出題されています。こうした計算公式も東工大では重要事項です。
本問
(3)の求和技巧も、昨年前期[2]でもお目にかかったものです。東工大では、重箱のすみをつつくようなテーマはほとんど取り上げられません。数学の本流となっている重要受験技巧をしっかり修得して王道を歩くということを心がけてください。



[2](解答はこちら) [1]と同様に、この問題も落とせない問題ですが、'10年前期[1]でも出題された絶対値を含む関数の定積分の問題で、2年続いて同一テーマの出題となります。
東工大前期では、
2年続けて同一テーマの出題、ということを時折見かけます。絶対値を含む関数の定積分も、'01年前期[1]の計算が出題された翌'02年前期[1]にも2年続きで出題されています。他にも、'92年前期[5]の計算が出題された翌'93年前期[2]の計算が出題され、'96年前期[1]で、方程式の正の整数解が有限個しかないことを示す、という問題が出た翌'97年前期[3]に、nを自然数、rを正の有理数とするとき、をみたす自然数の組の個数が有限であることを示す、という問題が出題されています。
今年で言うと
[4]がやや無理な出題ですが、同じようなコンセプトで来年も出題してくるということが考えられます(もっとも、東工大出題者がこのウェブサイトのこの記述に気づいてしまうと、敬遠すると思いますが)
想像するに、東工大出題者が、当然この程度のことはしっかり勉強してきてくれているはず、と、期待して出題したところが思いのほか出来が悪く、教育的配慮から受験生に警告を与える意味で、
2年連続で同一テーマの出題をしようという気になるのではないか、と、思います。
定積分の原理的意味を理解していれば、まさか、安易に、などとはやらないだろうと期待して出題しているのに、受験生の側が、面倒だからだとして計算をやっておいて採点者が見間違えないかと期待しているかのような答案を書いてくる、という現実を前に落胆して、
2年連続の出題、と、なるわけです。
こうした東工大前期の出題傾向を見ていると、東工大は、あれこれと細かい知識を要求しているのではなく、高校数学の重要テーマをしっかり勉強してきて欲しいと受験生に要求していることがわかります。
知識量を要求するのであれば、
2年連続で同一テーマの出題をするはずがないのです。従って、他の難関大学では必ずしも過去問をていねいに見ておく必要はありませんが、東工大では長期にわたって過去問をしっかりと勉強しておくことが大切です。その分、些末な受験技巧まで修得しておく必要はありません。重要テーマについて、レベルの高い問題にも取り組めるような深い勉強が求められているのです。東工大志望者は、こうした東工大出題の特性をよく注意して受験準備をするようにしてください。



[3](解答はこちら) [1][2]同様に、この問題も標準的な問題です。東工大受験生であれば、手が止まるところはないでしょう。の形は、'92年前期[1]にも登場します。数学の教科書でグラフ作図の例題などとして取り上げられている関数なので、分母の2次式を0とおいてできる2次方程式が、実数解をもたない場合、重解をもつ場合、相異なる2実数解をもつ場合、それぞれどんなグラフになるか、くらいはつかんでおきましょう。
本問の解答では、
2次方程式を利用しましたが、単に微分しても大した手間はかかりません。工夫すればより簡単な解法も可能でしょう。関数の式を見た途端に微分計算を始めてしまうのは考え物ですが、試験会場では、微分して増減表を書いて最大最小を考える、というのは、一番安全確実な方法です。ある程度試行錯誤して簡単解法が思いつけないときには、微分計算をためらってはいけません。



[4](解答はこちら) 毎年、どこかの大学で途方もない難問が出題されますが、昨年は、東北大理系'10年後期[4]、一昨年は東大理系'09年前期[6]、本年は、この問題がそうした難問です。
出題者が何を考え、何を受験生に求めて、こうした問題を出題するのかわかりませんが、解答のように、まともに取り組むのではとても時間内にはやりきれません。合格したければ、
(1)の答案としては、
「直線と平行な直線が正方形
Dと唯1点で交わるときと、2交点をもつように交わるときとを比較して、2交点をもつときの方が、回転させる図形の境界線と回転軸との距離が大きくなるので、回転体の体積も大きくなり、回転体の体積を最大にする直線はDと唯1点で交わる。」
くらいにとどめ、
(2)に全力をつぎ込むべきだと思います。
本問で大変になってしまうのは、正方形
Dを回転軸について対称に折り返すとき、出っ張る部分やくぼんでしまう部分ができてしまうところにあります。素直に回転軸のまわりの回転体の体積の公式を使うにしても、円筒分割の技巧を使うにしても、場合分けも面倒で、しかも計算が非常に煩雑です。(1)の解答中の(iii)
は、mkの値によっては負にもなるので、を示すのも容易ではありません。本問は、難しい、というだけでなく、ボリュームも凄まじいので、深入り禁物、正面から体当たりすることを考えてはいけません。
ですが、不充分解であってもどれほど取り組めるか、というような観点で採点しているのであれば、適当にごまかして書いておけばよい、という風潮をあおることになり、個人的には、入試問題としては不適切なのではないかと思います。出題者に制限時間内に充分に解答を書き上げることが可能な問題を工夫して頂けるように、再考をお願いしたいと思います。



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